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地中カーボンストック技術の温室効果ガス削減効果を検証(2009年4月17日)

-丸太打設による地盤改良の実物大実験により、施工におけるCO2排出量と貯蔵量を比較-

 飛島建設(株)(社長・篠部 正博)は、福井県雪対策・建設技術研究所(所長:田中 房一)、早稲田大学濱田政則教授、福井工業高等専門学校吉田雅穂准教授と共同で、地盤改良の実物大実験により木材による地中カーボンストック技術が温室効果ガス削減に効果のあることを検証しました。
 平成20年3月からスタートした実物大の実験施工を行い、丸太に貯蔵された炭素量と一連の工事によって排出された二酸化炭素量を計測し収支を求めました。これにより、木材による地中カーボンストック技術による地盤改良が温室効果ガス削減に寄与できることを検証しました。この事実を示すことで、土木事業においても木材を積極的に使用する足掛かりとなることが期待されます。

検証実験概要

実施時期:平成20年3月より(木杭の打ち込みは平成20年10月、現在計測継続中)
実施場所:福井県敦賀市泉
共同実施者:福井県雪対策・建設技術研究所,早稲田大学,福井工業高等専門学校

○二酸化炭素排出、貯蔵量計測の概略工程
現在、実大規模の丸太打設による軟弱地盤対策実験をH20/3より実施し現在も継続中ですが、木材の伐採から丸太打ち込み(H20/10)の期間中に実際の工事に関連する二酸化炭素排出量と丸太による炭素貯蔵量を計測
 
○現場実験ヤードの概要(図-1)
砂礫の良好な地盤に深さ4m、地表部で幅13m、長さ28m、底部は幅5m長さ20mの溝を掘り、そこにヘドロ状の土質を投入し、人工の埋土地盤を造成
 
○地盤対策パターン
埋土地盤を4区画に分け、
・丸太を0.5mピッチで打設
・丸太を1.0mピッチで打設
・無対策(プレローディング工法に対応)
・土木シートによる地盤対策
 
○丸太の樹種、形状
スギ 末口0.15m、長さ3m
 
図-1)現場実験ヤードの概要

各作業における二酸化炭素排出量の比較


図-2)丸太による炭素貯蔵量と、各作業による二酸化炭素排出量

 図-2は、丸太を0.5mピッチに打設した場合の丸太による炭素貯蔵量と各作業による二酸化炭素排出量を示したグラフです。本工事の場合、工事による二酸化炭素排出量よりも丸太による炭素貯蔵量の方が大きく上回り、工事することが二酸化炭素削減に寄与することが確認されました。
 全工程では、伐採搬出、丸太打設、サンドマット、盛土作業工程で二酸化炭素排出量が多くなっています。一方、地拵え~枝打ちの工程における二酸化炭素排出量は極めて少ないことがわかります。作業別の内訳では、伐採搬出では作業員の現地往復(通勤)に掛かる排出の割合が大きく、サンドマットと盛土施工においてはダンプ等の運搬による排出の割合が大きくなっています。

各地盤改良方法による二酸化炭素排出量の考察

図-3)各地盤改良方法による二酸化炭素貯蔵量の比較
図-3は、各地盤改良方法の違いによる二酸化炭素排出量(貯蔵量)の比較です。無対策はプレローディング工法として表示し、スギ丸太を0.5mピッチ、1.0mピッチで打設した場合との比較を行いました。
また、盛土の運搬距離を50km、100kmとした推計も行いました。それぞれの値は、既往の原単位データと工事量などから推計したものです。図中破線は、原単位に今回の実測結果を用いたものです。原単位として既往のデータを用いた場合も、実験結果を用いた場合も大きな差がないことがわかります。次に、通常の地盤改良工事において最も二酸化炭素排出量が少ないと考えられるプレローディング工法においても二酸化炭素は排出側にあり、盛土運搬距離が大きくなるとその排出量も大きくなることがわかります。一方、本地中カーボンストック技術を用いた地盤改良を行うことで、二酸化炭素排出量は貯蔵側に転じます。ただし、丸太1.0mピッチの地盤改良が示すように材料の運搬距離などが大きくなると二酸化炭素の収支は二酸化炭素排出側となってくることが理解できます。
したがって二酸化炭素収支をできる限り貯蔵側にさせるには、丸太を多く利用する以外に、工事による排出量を低減させること、特に、ダンプなどによる材料の運搬距離を小さくし、丸太とともに盛土材料なども地産地消とすることが有効であることがわかりました。実際に工事を施工する際は、このような条件を考慮し工事をすることにより、二酸化炭素排出量を減らすばかりではなく、さらに積極的な地球温暖化防止対策として、確実に貯蔵量を増やすことが必要だと考えられます。

今後の展開

 実際に丸太を打設する工事を行い、丸太による炭素貯蔵量と工事によって排出される二酸化炭素量を実測することにより、一般に工事を行うことで二酸化炭素排出となる工事が逆に二酸化炭素削減に寄与できることを検証しました。また、二酸化炭素排出の大きな要因について、盛土などの材料運搬の影響が大きく、実際の工事においてはこれをいかに小さくし、地産地消とするかが重要であることも確認できました。
 今後、現在実施中の地中カーボンストックによる地盤対策方法と地下水位変動域以浅で腐朽が心配される領域における腐朽対策方法について順次検討を進めます。
 本検討結果については、2009年7月16-17日に秋田市民交流プラザで開催される第8回環境地盤工学シンポジウム(主催:(社)地盤工学会,共催:秋田県立大学)で発表する予定です。

参考:実験施工写真集

   

(1)伐採作業

 

(2)搬出作業

 

(3)皮むき作業

         
   

(4)サンドマット敷設作業

 

(5)丸太打設作業

 

(6)盛土造成作業

         
       

(7)盛土造成後

       

参考:炭素貯蔵の原理

 樹木は大気中から二酸化炭素を吸収し、光合成により酸素を排出し炭素を樹木として体内に固定し成長するので、樹木が成長し大きくなった相当分大気中から二酸化炭素を削減したこととなります。
 これを例え燃焼させても、二酸化炭素が再び元の大気へ戻るだけなので、大気中の二酸化炭素の増加にはなりません。植林や樹木の成長による木材体積の増分以内で木材をエネルギーとして使用する限り、大気中の二酸化炭素は減少し、しかも無限に使用できます。
 大気中の二酸化炭素を吸収して生長した木材を燃焼させず長期貯蔵すれば、地球全体の木材量がさらに増加したこととなり、その相当分大気から二酸化炭素を削減したこととなります。
 例えば、住宅や家具に木材を使用しそれを長期使用することで木材の総量が増えたことになります。
 セメントや鉄などのエネルギー集約度の高い材料から木材に代替すれば、大気からの二酸化炭素削減に加え二酸化炭素の排出削減効果も得られます。日本のように既に国土の2/3が森林で覆われている国では、植林を継続しながらも、樹木を計画的に伐採し、このように森林以外の人間生活の中で長期使用し木材体積を増加させて行くことも有効な方法です。このような木材の新たな利用先として土木工事への利用が考えられ、特に具体的な方法として、我々研究グループでは液状化対策や軟弱粘性土地盤対策のような地下水位が浅い地盤を対象とした基礎杭や地盤改良材に丸太を用いることを考えています。

図-5)植林,伐採,木材長期貯蔵によるカーボンストックのイメージ
 
図-4)樹木による炭素の循環(カーボンニュートラル)

※なお、本研究において二酸化炭素収支の計測は,独立行政法人日本学術振興会の科研費(20246078)の助成を得て実施したのものです。

ニュースリリースに関するお問合せ先

技術研究所 第二研究室 担当:沼田、本山 TEL.04-7198-7553

ニュースリリースに関するお問合せ先

社長室経営企画部広報G 担当:小島 TEL.03-5214-8212

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