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コンクリート品質向上に向けた、高精度湿度管理による養生管理方法を開発(2009年9月9日)

コンクリート品質向上に向けた、高精度湿度管理による養生管理方法を開発
-コンクリート打設時埋設型温湿度センサーによる湿潤養生管理方法の実用化-

 飛島建設(社長:篠部正博)は、打設時にコンクリートの中に埋め込むタイプの温湿度センサーを用いてコンクリート内部の空気中に含まれる水蒸気の量と、相対湿度(その時の温度で空気が含み得る水蒸気の最大量との比率)計測データに基づく湿潤養生を管理する方法を開発、県道山口宇部線道路改良(小郡トンネル)工事に初適用し有用性を確認・実用化しました。
 コンクリートの品質を確保するための重要な工程のひとつにコンクリート打設後の湿潤養生があり、環境条件や施工条件に合致した適切な湿潤養生方法を選定するとともに、施工管理では適用した湿潤養生方法により期待した効果が発揮されているか把握し、乾燥など異常があれば速やかな対策を行うことが重要です。
 今回開発した「温湿度センサーを用いた湿潤養生管理方法」を現場に適用することにより、コンクリート内部の相対湿度の低下傾向を適時に把握し、散水など湿度回復策を遅滞なく施すことが可能になり、より精度の高い品質管理ができることを実証しました。

湿潤養生について

 湿潤養生の目的は、コンクリートの硬化過程における乾燥防止と硬化作用を発揮するための水の確保であり、土木学会コンクリート標準示方書や日本建築学会JASS5鉄筋コンクリート工事には、湿潤養生を行う期間として「普通ポルトランドセメントで5日間以上」などが規定されています。
最近では、施工性を考慮した湿潤養生方法として、保水性能を向上した養生マットや粘着テープによりコンクリート表面に貼り付けるタイプの湿布養生などが開発・実用化されています。
一方で、従来から湿潤養生方法として広く用いられてきた膜養生剤では、その種類や塗布方法により、気中養生と同等の水分逸散が生じたとする報告もあり、コンクリート品質を確保するため、適切な湿潤養生方法の選定と湿潤効果の把握、速やかな対応が重要になります。

湿度センサーを用いた養生管理方法


 実施工において、水中・湛水養生が可能な場合を除き、完全な湿潤状態の確保は困難で、シートなどによる覆いを設けた場合でも、密閉空間内を完全な湿潤状態とするのは難しいことです。
これらの場合であっても、コンクリート内部の湿潤状態がセメントの水和を阻害しない程度(相対湿度80%超、相対湿度とは空気中に含まれる水蒸気の量と、その温度の空気が含み得る水蒸気の最大量との比率であり、%RHで表す)に維持されれば、コンクリートの硬化作用は順調に発揮されると考えられています。今回、打設後の養生期間にコンクリート内部の湿潤状態を把握するため、図-1のようなコンクリート内部の相対湿度計測による湿潤養生管理方法を開発しました。
図-1 相対湿度計測による
湿潤養生管理方法の概要

 これは、埋込みタイプの湿度センサーを用いて、任意の養生方法によるコンクリート内部の相対湿度を原位置で計測し、内部相対湿度の低下傾向を検出した場合など必要に応じた対策を実行することで、養生期間の湿潤状態を確保する方法です。

 コンクリート打設後、養生初期段階から内部相対湿度を計測する必要があり、既に研究例が多数あるセラミックセンサーのような埋込みタイプの湿度センサーが必要でした。セラミックセンサーは高価なため、ここでは汎用性を考慮し、市販の温湿度センサー(高分子膜・抵抗型)を採用することにしましたが、高分子膜型センサーは結露環境下で適用できず、フレッシュコンクリートへの埋込みができないなどの課題がありました。
そこで、<写真-1>に示すように、耐アルカリ透湿防水フィルムによるセンサー部の透湿防水処理およびシリコン樹脂・ブチルゴムによる基板・ケーブルの防水処理を施し、フレッシュコンクリートへの埋込みを可能にしました。

写真-1 防水処理温湿度
センサー・データロガー

 本センサーの耐水性能確認のため、約8時間の水中浸漬と、その後の気中放置に至る測定を技術研究所で実施しました
<図-2:その結果の一例>。
防水処理を行った温湿度センサーで得られた相対湿度は、水中浸漬で99%RH(機器の最大表示であり、飽水状態と考えられる)を示し、その後の気中放置開始から30分程度で室内環境を反映する程度に低減しています。よって、本センサーの耐水性能はフレッシュコンクリート中への埋込みにも耐え得ると判断しました。

図-2 温湿度センサーの耐水性能試験結果

本センサーの拡張性能

 また、本センサーは、相対湿度のみならず温度も測定可能であり、水和熱による温度上昇や散水養生における急激な温度低下などの計測にも活用できます。
さらに、図-1、写真-1に示したデータロガーは、無線通信によりパソコンへデータ収録が可能ですので、大規模構造物を対象とした現場でも、容易に計測システムを構築することができます。

山岳トンネル覆工コンクリート実施工への適用例

工事件名 県道山口宇部線道路改良(小郡トンネル)工事
施工場所 山口県山口市小郡上郷字円座~山口市小郡下郷字迫田弐
発注者 山口県
施工者 飛島建設・フジタ・藤本工業・栗本特定建設工事共同企業体
システム適用期間 平成18年10月11日 ~ 平成22年1月8日 (坑内環境変化時、適時計測)

 従来、山岳トンネルの坑内環境は安定しており一般に高湿度という理由で、覆工コンクリート打設後、数時間程度で脱型され、特に養生は行われていませんでした。しかし、近年、品質向上の取り組みとともに坑内の粉じん低減などを目的に坑内換気能力が向上し、換気量増加にともなう坑内湿度が低下し、早期脱型および乾燥環境に起因するひび割れが懸念され、そのひび割れ低減策として適切な湿潤養生が求められています。

適用状況

覆工コンクリート 計測箇所 コンクリートの配合
  • 厚さ30 cm
  • 延長10.5m
  • 内空断面積65m2
  • 坑口からの距離約70m
  • 対象ブロックの坑口側端部から10 cm
  • 天端部の表面からの深さ1cmと3 cm
  • 坑内雰囲気と側壁部の深さ1 cm
    >>コンクリート打込み前に防水処理を施した
    温湿度センサーを所定の位置に固定
  • 設計基準強度24 N/mm2
  • 水セメント比58.1%
  • 単位水量162 kg/m3
  • 粗骨材最大寸法40 mm
  • スランプ15 cm
  • 高炉B種セメント
  • AE減水剤標準形I種

図-3 温湿度センサーの配置図

養生状況とコンクリート埋め込みタイプ温湿度センサーによる計測結果

 コンクリート打設後、材齢3日で脱型し脱型後噴霧散水機にて適宜散水し、1ブロックあたりの散水量は60~400L程度としました。また、送風量1600 m3/minの換気を週2回の整備期間を除き継続し、対象ブロックでの風速は0.2~0.7 m/sec程度でした。

 坑内相対湿度は、散水により大きく変動し、散水直後は99%RHを示す場合もありましたが、その変動を除くと60~80%RHで安定した結果でした。天端部深さ1cmの内部相対湿度は,打設後に99%RH を保持、脱型後急激に低下し85%RH以下となりました。その後、散水により相対湿度が回復することを確認しました。
 一方,天端部深さ3 cmと側壁部深さ1cmの内部相対湿度の低下は、天端部深さ1cmより遅く、それぞれ脱型後2日後、6日後でみられ、低下傾向も天端部深さ1cmほど急激ではありませんでした。
以上から、開発した養生管理方法でコンクリート内部の相対湿度を原位置で計測し、養生期間のコンクリートの湿潤状態を確認することできました。また、内部相対湿度の低下傾向を適時に把握し、散水など湿度回復策を遅滞なく施すことが可能となり、より精度の高い品質管理ができることを実証しました。



写真-2  トンネル坑内での散水養生状況&使用機械(ステレオスプレヤー)

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