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光ファイバセンサを用いた高精度なハイブリッドひずみ計測システムを開発 -(2011年6月16日))

光ファイバセンサを用いた高精度なハイブリッドひずみ計測システムを開発
―構造物全体にわたって100μ以下の精度でひずみを計測―

 飛島建設株式会社(社長:伊藤寛治)と京都大学(大学院工学研究科准教授:塩谷智基)は、 FBG方式とBOTDR方式の2つの光ファイバセンシング技術を統合した、高精度なハイブリッドひずみ計測システムを開発しました。本システムを用いて、両方のセンシング技術で同一の光ファイバセンサのひずみを計測し、計測データを計算処理することにより、長大橋梁やトンネルなどの大規模な建設構造物全体のひずみを、最大9kmの区間にわたって100μ以下の高精度で求めることができます。今後、本システムを、大規模建設構造物の維持管理のためのモニタリングに活用していく予定です。

開発したハイブリッドひずみ計測システム

1.光ファイバセンシング技術の2つの方式を統合した自動計測システム
 光ファイバセンシング技術のうち、FBG方式で、FBG素子のある点(最大100点)のひずみを約5μの高精度で計測するとともに、光ファイバ全線(最大9km)にわたってBOTDR方式でひずみを計測します。両方式の計測装置を自動制御し、計測値を自動計算処理して統合・補正する自動計測システムです(図1)

2.構造物全体のひずみを100μ以下の高精度で計測可能
 FBG方式とBOTDR方式の計測結果を計算処理することにより、100μ以下の精度で構造物全体のひずみを求めることができます(図2)

図1 ハイブリッドひずみ計測システムの構成
図1 ハイブリッドひずみ計測システムの構成

図2 ハイブリッドひずみ計測システムによる計測精度の向上効果
図2 ハイブリッドひずみ計測システムによる計測精度の向上効果

開発の背景

 建設構造物は完成後数十年の長期にわたって供用されるため、従来の電気式計測技術に比べて耐久性が高い光ファイバセンシング技術は、建設構造物の維持管理のモニタリングに適しています。光ファイバセンシング技術のうち、FBG(Fiber Bragg Grating)方式とBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)方式は、ともにひずみを計測することが可能な技術なので、建設構造物の計測・モニタリングに活用されています。

 建設構造物の維持管理モニタリングとして構造物のひずみを計測する場合、コンクリートにひび割れが生じる100μ程度の引張ひずみが、変状発生の一つの目安となります。100μの引張ひずみを光ファイバセンサで計測する場合、FBG方式では、光ファイバ上に配置された複数のFBG素子の位置で、約5μの高精度でひずみを計測することができますが、FBG素子がない場所では計測は不可能です。一方、BOTDR方式は光ファイバそのものをセンサとして使用するため、光ファイバ全線でひずみを計測することが可能ですが、数百μの誤差が生じる場合があります。このように、両技術は、それぞれ固有の特徴を持っており、単独の適用では、構造物全体のひずみを、100μ以下の精度で計測することはできませんでした(表1)。

表-1 FBG方式とBOTDR方式の光ファイバセンシング技術の特徴
  FBG方式 BOTDR方式
計測原理 FBG素子に生じるひずみを、ブラッグ波長の変化として計測1) 光ファイバに生じるひずみを、ブリルアン散乱光の波長の変化として計測2)
ひずみ計測位置 光ファイバ上のFBG素子の位置 光ファイバ上の全ての位置
計測精度 数百μ
信号伝送距離 最大9km 最大80km

1) 光ファイバの端部から光を入射すると、FBG素子で特定の波長(ブラッグ波長)成分の光が反射します。ブラッグ波長は、FBG素子に生じるひずみに応じて変化するので、波長の変化を計測することにより、ひずみを知ることができます。

2) 光ファイバの端部から光を入射すると、光ファイバのあらゆる位置で特定の波長成分の光(ブリルアン散乱光)が散乱し、戻って来ます。ブリルアン散乱光の波長は、光ファイバに生じるひずみに応じて変化するので、波長の変化を計測することにより、ひずみを知ることができます。

ハイブリッドひずみ計測システムの概要

 そこで、FBG方式とBOTDR方式の両技術の利点を活かし、構造物全体にわたって100μ以下の精度でひずみを計測するため、これらの2つの光ファイバセンシング技術を統合した、ハイブリッドひずみ計測システムを開発しました。本システムは、複数のFBG素子を配置した光ファイバをセンサとして構造物に設置し、両方の技術を同じセンサに適用するひずみ計測技術です。これにより、FBG方式で、FBG素子の位置で構造物のひずみを高精度に計測するとともに、BOTDR方式で構造物全体のひずみを計測します。さらに両方の計測値を計算処理し統合・補正することにより、100μ以下の精度で構造物全体のひずみを求めることができます(図1、図2)

本計測システムは、以下の特長・機能を持っています。

  • FBG方式とBOTDR方式の両方の計測装置を自動制御
  • 計測データを自動処理し、制御PCにグラフ表示
  • 計測システムをVPN(Virtual Private Network)でネットワーク化することにより、制御PCを計測サイトから離れた場所に設置し、計測制御・モニタリングを行うことが可能
  • 最大9kmの範囲の構造物のひずみ計測が可能

 本システムの運用で変状の発生が確認された場合、高精度なFBGセンサを追加接続し計測することにより、システム運用の第二段階として、変状が確認された特定場所の詳細な変化をモニタリングすることが可能です(図3)

図3 変状発生時のFBGセンサ追加による詳細モニタリング
図3 変状発生時のFBGセンサ追加による詳細モニタリング

 なお、FBG方式は、複数のFBGを同一の光ファイバに配置(多重化)し計測を行いますが、通常の多重化方式である波長分割多重化(WDM)方式では、多重化可能なFBG素子の個数は実用上約10個です。これに対し、本システムでは、大規模構造物への適用を踏まえ、最大100個のFBG素子の多重化が可能な時間分割多重化(TDM)方式を適用しています。飛島建設では、TDM方式FBG光ファイバセンシング技術により、ひび割れ幅計測用センサや高精度なひずみセンサなど、さまざまなセンサを開発し適用を進めています。

今後の展開

 平成22年12月に、飛島建設のトンネル工事現場で試験適用を始めており、現地適用での有効性を確認中です。今後、現地検証を踏まえて、本システムを大規模建設構造物の維持管理のモニタリングに積極的に活用していきたいと考えています。

補足

※本システムの開発は、国土交通省の建設技術研究開発助成制度(平成21年度~平成22年度)の助成を受けて実施いたしました。

参考資料

【室内試験】

鋼材を用いた室内試験
鋼材を用いた室内試験

長さ12mのH型鋼 (100×100×6×8)のフランジ中央に,光ファイバセンサを接着し,ジャッキでH型鋼を変形させ,ひずみを測定しました。

【 光ファイバセンサ 】

鋼材を用いた室内試験
光ファイバセンサ

仕様:
  ・長さ12m、断面寸法 5mm×2mm FRP製
  ・中心に,FBG素子が書きこまれた光ファイバを配置

ニュースリリースに関するお問い合せ先

飛島建設株式会社 経営管理本部 経営企画部 広報室   松尾 和昌  TEL:03-5214-8212

技術・資料に関するお問い合せ先

飛島建設株式会社 建設事業本部  エンジニアリング事業推進部 インフラ防災グループ  田村 琢之 TEL:03-5214-8239

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