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FBG光ファイバセンサを用いた高精度な2次元変位計を開発(2012年2月2日)

FBG光ファイバセンサを用いた高精度な2次元変位計を開発
-軌道や橋梁、トンネルの軸直角方向の変位分布を誤差1mm未満で計測-

 飛島建設株式会社(社長:伊藤寛治)は、FBG光ファイバセンサを用いて、構造物の軸直角方向の変位分布を高精度に計測する2次元変位計を開発しました。この変位計により、軌道の沈下・移動やトンネルのはらみ出し・沈下、橋梁のたわみを、上下・水平方向の2次元で1.0mm未満の誤差で監視・モニタリングすることができ、既存の折れ角を利用した計測器と比較して、振動に強くメンテナンスが容易になります。また、対象点の座標を直接計測するトータルステーションやGPSなどの方法では計測が困難な、地中の構造物や障害物の近接箇所でも適用が可能です。ガラス繊維強化プラスチック(FRP)で被覆したFBG光ファイバセンサの高耐久性とリアルタイム性を活かし、これまでに開発した構造物健全性モニタリングシステムや斜面防災監視システムなどとともに、構造物の維持管理のための長期モニタリングや防災監視に活用していく予定です。

開発した2次元変位計の特長

①高精度で変位分布計測が可能(図1)
  時間分割多重化方式(TDM)*1)のFBGを2m以下の高密度間隔で配置した3本のFBGセンサを、ガイド管内部に正確に平行配置します。これによって、軸方向10mの長さのどの位置でも、軸直角方向の変位を1.0mm未満の誤差で計測できることを精度検証試験で確認しました。

②最大50mの高精度変位分布計測が可能(図1)

③配線数は大幅に減少しメンテナンスが容易
  2次元変位計では、TDM方式を用いて同一ファイバに多数のFBGを配置できるため、1つの2次元変位計で最大50mの長距離で高精度の変位分布計測が可能で、かつ配線数は大幅に減少しメンテナンスが容易になります。

④高耐久性により長期間の計測が可能
  2次元変位計に使用するFBGセンサ(図2)は、通常の外径0.15~0.25mmのガラス製センサをFRPで被覆しているため、衝撃に強く、また外部からの水分などの侵入によるセンサの劣化もほとんど発生しません。

⑤振動に強い構造
  2次元変位計は、既存の折れ角を利用した計測器の各節点にある、ヒンジやバネなどの機械的な回転・固定機構を持たないため、振動に強く、損傷の可能性はほとんどありません。

高精度変位分布計測の実現と精度検証試験の確認

(1)高精度変位分布計測実現のための実施事項

 高密度にFBGセンサを配置できるFRPで被覆したTDM方式のFBGセンサを使用しています、スペーサーを用いて3本のFBGセンサをガイド管内部に正確に平行配置しました。また、ガイド管変形時にFBGセンサが移動しないように無収縮モルタルで空隙を充填し固定しました。

(2)精度検証試験の概要と結果

 図3のように、長さ10mの2次元変位計の両端を固定し、中央部に所定の変位が生じるよう3台のジャッキで側面から変位を与え、計測結果を接触式変位計による実測値と比較しました。2次元変位計全体の精度を確認するため、接触式変位計は2次元変位計に沿って1m間隔で配置しました。両端をピンでとめ回転端とした場合(ケース1)と、金具で挟みこみ固定端とした場合(ケース2)の2通りの変形を与えた結果、FBG間隔(ひずみ間隔)を2m以下とした場合、図4および図5のように、誤差の最大値はともに1.0mm未満となり、高精度で変位分布が得られることを確認しました。

図3 試験概要平面図
図3 試験概要平面図

図4 変位分布の誤差(ケース1)
図4 変位分布の誤差(ケース1)

図5 変位分布の誤差(ケース2)
図5 変位分布の誤差(ケース2)

計測システムの構造的特長とTDM方式の優位性

 2次元変位を求める既存の計測器として、図6のように2.5m程度の間隔で節を持つパイプが曲がった時の、節の折れ角から変位量を求めるものがあります。この計測器は節で回転し、かつ節以外の部分が動かないように固定するためのヒンジやバネなど、機械的な回転・固定機構を持ちます。しかし、折れ角を計測するため各節点に設置されるセンサは、データロガーのスイッチボックスまでリード線で接続されますが、センサ数が多くなると、配線数も多くなり、多くのセンサを配置する各節点は構造上の弱点になります。これらの課題を解決するため、図7に示すTDM方式のFBGセンサを利用した2次元変位計を開発しました。開発した2次元変位計には、以下のような優位性があります。

・構造的優位性

①ヒンジやバネを持たないため、振動による損傷の可能性はほとんどありません。

・TDM方式の優位性

②1本の光ファイバでの多数のFBGセンサ(最大100個)を光測定器に接続するので、配線数は大幅に減り、メンテナンスが容易です。

③計測に電気信号を用いないので、電磁気の影響によるノイズが発生しません。

④光測定器は、2次元変位計から最大9km離れた場所に配置できるので、事務所などの管理が容易な場所に置き、直接データを収集することができます。

図6 節点の折れ角を利用する計測器を用いた計測システム
図6 節点の折れ角を利用する計測器を用いた計測システム

図7 2次元変位計を用いた計測システム
図7 2次元変位計を用いた計測システム

表1 計測システムの比較
表1 計測システムの比較

2次元変位計の構造と原理

 2次元変位計は、FRPで被覆した外径3mmのロッド状FBG光ファイバセンサ(以下FBGセンサ)を、図8のようにガイド管の内部に平行に3本配置した構造となっています。計測対象の構造物とともに変形するよう、2~5m間隔で対象構造物に固定します。構造物の変形にともない2次元変位計が図9のように変形すると、内部のFBGセンサに軸方向のひずみが発生*2)します。このひずみから曲率を求め、2階積分した結果を軸方向で合計し、図10のような軸直角方向の変位分布を得ることができます。軸方向のひずみから曲率を求めるときの計算は、(1)式を用います。X軸周りの変位は図8のAとBのFBGセンサのひずみで計算し、Y軸周りの変位はAとCのひずみで計算します。なお変形の際FBGセンサがガイド管の内部で移動しないよう、無収縮モルタルを充填しています。

① ヒンジやバネを持たないため、振動による損傷の可能性はほとんどありません。
② 1本の光ファイバでの多数のFBGセンサ(最大100個)を光測定器に接続するので、配線数は大幅に減り、
   メンテナンスが容易です。
③ 計測に電気信号を用いないので、電磁気の影響によるノイズが発生しません。
④ 光測定器は、2次元変位計から最大9km離れた場所に配置できるので、事務所などの管理が容易な場所に置き、
   直接データを収集することができます。

図10 節点の折れ角を利用する計測器を用いた計測システム

図8 2次元変位計の構造
図8 2次元変位計の構造


図9 変形時に生じるFBGセンサのひずみ
図9 変形時に生じるFBGセンサのひずみ

図10 軸直角方向の変位
図10 軸直角方向の変位

2次元変位計の適用例

①軌道の沈下・移動監視

 軌道と平行に設置し、地震や豪雨などによる軌道の沈下・移動を監視します。GPSやトータルステーションでは数分から数十分の時間がかかるのに対し、数mm程度のわずかな変化をリアルタイムで確認できるので、大きな災害になる前に対策を取ることができます。また、電気式計測器と異なり、センサや伝送ケーブルは電磁場の影響を受けないので、計測値はノイズがなく安定しています。

図11 軌道の沈下・移動モニタリング例
図11 軌道の沈下・移動モニタリング例

②トンネルのはらみ出し・沈下モニタリング

 トンネルの変状発生箇所付近に設置し、GPSでは計測不可能なトンネルの側壁や天端のはらみ出し・沈下をモニタリングします。耐久性が高いので、長期間のモニタリングが可能です。また、光測定器は2次元変位計から最大9km離れた場所に設置しても計測が可能なので、トータルステーションやデータロガーのような計測機器を計測箇所付近に置く必要がなく、機器の管理が容易です。

図12 トンネル側壁のはらみ出しモニタリング例
図12 トンネル側壁のはらみ出しモニタリング例

③橋梁のたわみモニタリング

 橋桁の軸方向に設置し、劣化等で生じるたわみをモニタリングします。トータルステーションやGPSと異なり、障害物があって見通しがきかない場合でも、2次元変位計設置箇所全般の変位分布を計測できます。時間分割多重化方式によるFBGの多重化により、大規模な橋梁への対応も可能です。

図13 橋桁のたわみ計測例
図13 橋桁のたわみ計測例

今後の展開

 室内の精度検証試験で、建設構造物の計測・モニタリングに十分な計測精度をもつことが確認できたことから、今後現地適用を進め、積極的に活用していきたいと考えています。

【参考資料】

*1)時間分割多重化方式(TDM)の原理

 FBGの多重化技術のうち、波長分割多重化方式(WDM: Wavelength Division Multiplexing)は、図Aのように、反射波長の相違で同一光ファイバ内の個々のFBGを区別します。しかしながら、FBGの使用波長帯は限られているため、WDM方式では多重化可能なFBGの個数が制限されます。これに対し時間分割多重化方式(TDM: Time Division Multiplexing)では、図Bのように反射光の到達時間差でFBGを区別するため、使用波長帯幅の制限を受けることなく多数のFBGを多重化することができます。WDM方式では1つの計測システムで実用上最大十数個の多重化が限界ですが、TDM方式では光損失がない場合、最大100個のFBGを多重化することができます。

図A 波長分割多重化方式(WDM)の原理
図A 波長分割多重化方式(WDM)の原理

図B 時間分割多重化方式(TDM)の原理
図B 時間分割多重化方式(TDM)の原理

*2)FBGセンサの原理

 FBGセンサは、図Cのように光ファイバ上に配置された複数の回折格子(FBG:Fiber Bragg Grating)で軸方向のひずみを計測するセンサです。光ファイバの端部に接続した光測定器から入射した光は、FBGで特定の波長の光を反射します。反射光の波長はFBGに生じたひずみに応じて変化するため、波長の変化量を計測することにより、ひずみを知ることができます。電気式ひずみゲージと同等の数μの誤差でひずみを計測します。

図C FBGセンサのイメージ
図C FBGセンサのイメージ

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ニュースリリースに関するお問合せ先

飛島建設株式会社 経営管理本部 経営企画部 広報室  松尾 和昌 TEL:044-829-6751

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飛島建設株式会社 建設事業本部 エンジニアリング事業推進部 インフラ防災グループ
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