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あらゆるコンクリート構造物に適用可能な「一面配置型 弾性波トモグラフィ」を開発(2012年4月26日)

コンクリート構造物非破壊診断技術
あらゆるコンクリート構造物に適用可能な 一面配置型 弾性波トモグラフィを開発

 飛島建設株式会社(社長:伊藤寛治)は、塩谷智基准教授(京都大学大学院工学研究科)、小林義和准教授(日本大学理工学部)との共同研究により、弾性波の表面波成分の特性を利用した「一面配置型 弾性波トモグラフィ」(図-1)を開発し、コンクリート構造物の非破壊診断技術である弾性波トモグラフィをあらゆる構造物へ適用可能にしました。

 この「一面配置型 弾性波トモグラフィ」は、表面波成分の特性※1)に着目し、構造物の片側表面で計測した表面波速度の分布図として内部や背面側の健全性を可視化します。これにより、コンクリート構造物内部のひび割れや空隙などの位置や程度を、構造物の片側表面からのアプローチで短時間で広域的に把握できるようになりました。これまで展開してきた「3次元構造物健全性診断システム『DaCS-3D』※2)」では適用できなかった“挟み込むことができない”構造物に対しても、弾性波トモグラフィによる広域的な健全性診断が可能です。

一面配置型 弾性波トモグラフィの特長

(1)適用対象構造物を拡大
  コンクリート構造物の片側表面からのアプローチで、内部や背面側の広域的な診断を実現します。
  トンネルの覆工コンクリートや橋梁床版など、これまで弾性波トモグラフィの適用が不可能であった
  コンクリート構造物においても適用可能です。

(2)解析処理を高速化
  独自の分析手法とシステム化により解析処理の高速化を実現しました。手作業処理で要した時間の約10分の1にまで
  改善しています。(ex。床版下面6×6 m:【当初】5日間→【現在】0.5日間)


一面配置型 弾性波トモグラフィの概要

 これまでの弾性波トモグラフィは、透過弾性波を利用するためコンクリート構造物内部の診断を行うためには、構造物を挟み込むようにセンサを配置する必要がありました。しかし、コンクリート構造物にはトンネルやダム、橋梁床版、よう壁などのように、アプローチが片側表面に制限される場合が少なくありません。このような場合、透過弾性波を利用した弾性波トモグラフィによる健全性診断は不可能でした。

 今回開発したこの一面配置型の弾性波トモグラフィは、片側表面からのアプローチでも弾性波トモグラフィによる内部の診断が可能です。図-2に示す検証試験において、片側表面に配置したセンサによる計測でコンクリート試験体の模擬欠陥を検出しています。この一面配置型の評価深さは表面波の波長(周波数)に相当します。図-2 ③のように打撃する鋼球径を大きくして波長を長くすることで、より深い位置における健全性診断も可能です。

適用事例

 全ての領域に対して詳細な調査やコア採取を実施するのではなく、この一面配置型 弾性波トモグラフィを用いて、コンクリート構造物の内部や背面側の健全性診断を行います。内部欠陥(ひび割れや空洞など)の位置や規模を広域的にスクリーニング調査することで、詳細調査を要する箇所を絞り込むことができ、より効率的な構造物の維持管理が実施できます。

 図-3は橋梁床版の断面修復工法の品質確認に適用した事例です。原位置付着強度試験は破壊を伴うため多点において実施することはできません。そこで、この一面配置型 弾性波トモグラフィを用いて、①全面的に重大な施工不良が無いことを確認後、任意の点ではなく②最も表面波速度が低い箇所を選定した原位置付着強度試験を実施しました。安心・安全な構造物を提供するために、施工したコンクリート構造物の効率的な品質確認にも活用していく予定です。

今後の展開

 2025年度には建設後50年以上経過する橋梁などのコンクリート構造物が一般国道・地方道など合わせて約70,000箇所に及ぶと想定されています。コンクリート構造物の効率的な健全性診断~延命化対策などの要請が拡大する将来を見据え、コンクリート構造物の維持管理・リニューアルを必要としている国や地方自治体、あるいは民間の構造物管理機関などを中心に展開していきます。

ニュースリリースに関するお問い合わせ

飛島建設株式会社 経営管理本部 経営企画部 広報室 松尾 和昌 TEL: 044-829-6751

技術・資料に関するお問合せ先

飛島建設株式会社 技術研究所 第一研究室 桃木 昌平 TEL: 04-7198-7572



 

※1)弾性波の表面波成分の特性

 構造物の表面において、鋼球やハンマなどのインパクタによって打撃して励起された弾性波の波動は、振動方向や波の進行方向によって縦波(P波)や横波(S波)など幾つかの成分に分けられます(図-4)。その中で、表面を伝播する表面波成分(レイリー波およびラム波、ここでは主としてレイリー波を示す)は、弾性波動の各成分の中で圧倒的にエネルギーが大きいことが知られています。この表面波は、表面近傍で楕円状の動きをしながら表面を伝播します(図-5)。この楕円状の振動範囲は波長と等しく、励起した表面波は波長に相当する深さ方向の状態に応じて変化を示します(図-6)。この特性を利用することで、表面に配置したセンサによる測定で、表面からは不可視である表層や内部の健全性診断が可能になります。



※2)3次元構造物健全性診断システム『DaCS-3D』

 「3次元構造物健全性診断システム『DaCS-3D』」は、透過弾性波を利用した弾性波トモグラフィによりコンクリート内部を可視化することで、健全性の診断や補修による改良効果の検証を広域的に行うことができる技術です。

 コンクリート構造物内を透過する弾性波から得られるパラメータ(伝播速度や減衰比)は、走査線間の平均的な情報であり、その変化から内部欠陥の有無は評価できても、位置や規模まではわかりません(図-7)。弾性波トモグラフィは、構造物を挟み込むようにセンサを配置して、多数かつ多方向の透過弾性波を測定します。それらの情報を基に検査する領域を幾つかの小領域(セル)に分割したモデルで数値解析を行い、各セル内の弾性波パラメータを算出します。モデルを各セルのパラメータの分布図として表現することで、弾性波パラメータが異常値を示す箇所やその変化量から、内部欠陥の位置や規模などを診断します(図-8)

※『DaCS-3D(ダックス・スリーディー)』:Damage Diagnosis System for Civil Structures with 3D Tomography
(飛島建設・日本大学共同研究、2007年12月、2009年10月ニュースリリース)

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