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練上がり温度を自動制御する吹付けコンクリート製造設備「スマートバッチャープラント®
(2017年4月20日)

練上がり温度を自動制御する吹付けコンクリート製造設備
「スマートバッチャープラント®
-厳冬の寒冷地にて安定した温度でのコンクリート製造を実現-


 飛島建設株式会社(社長:伊藤 寛治)および株式会社原商(社長:秀浦 淑晃)は、2016年5月に開発し、岩手県宮古市区界の国土交通省東北地方整備局の道路トンネル建設工事に適用した「スマートバッチャープラント®」が、厳冬の氷点下20℃の環境において、目標練上がり温度25℃のコンクリートを安定して製造できたことを確認しました。

 スマートバッチャープラントとは、山岳トンネル建設工事の主要支保部材である吹付けコンクリートの練上がり温度を自動制御して、練混ぜ材料の性能が最大限に発揮される一定の温度でコンクリートを供給できるコンクリート製造設備です(図-1、特許出願済み)。
 この自動温度制御機能は、以下の3つの要素によって成り立っています。

   機能Ⅰ:コンクリート材料である、水、細骨材(砂)、粗骨材(砕石)を加温する機能
   機能Ⅱ:各材料の練混ぜ前の正確な温度計測および練混ぜ時の連続温度計測機能
   機能Ⅲ:目標練上がり温度に合わせて冷水と温水の割合を自動調整する制御機能

図-1 スマートバッチャープラントの概要図

 今回スマートバッチャープラントを適用した岩井地区トンネル工事(発注:国土交通省東北地方整備局)は、本州の中でも特に寒さの厳しい岩手県宮古市区界に位置し、2016年度に区界のアメダスで観測された最低気温は氷点下19.5℃でした。このような厳冬下の環境では、目標練上がり温度である25℃を温水の加水のみで達成することは困難であるため、細骨材や粗骨材の加温も不可欠となりました。本工事では、ベルトコンベヤ上で搬送中の骨材を高温の蒸気により加温する方法を採用することで、1回の練混ぜに必要な量を効率的に加温することができました(写真-1)

写真-1 蒸気による加温状況

 その結果、図-2に示す通り、出荷されるコンクリートの温度(グラフの赤丸印)を目標の25℃前後にすることができました。温水ボイラで練混ぜ水を加温しているものの、蒸気による骨材の加温機能や自動温度制御機能のない従来のバッチャープラントが配備されているSトンネル(福井県小浜市)の練上がり温度と対比してみると、図-3に示す通り、出荷されるコンクリートの温度は15℃前後になっていたことが分かります。

図-2 2017年1月のスマートバッチャープラントの練上がり温度と外気温
図-3 2017年1月のSトンネルの練上がり温度と外気温

 次に、冬季(2016年12月~2017年3月)に出荷した吹付けコンクリートの全バッチの練上がり温度の分布を見ると、岩井地区トンネル工事では平均温度μが24.7℃、標準偏差σが1.9℃で、μ±σの範囲に78.4%のデータが含まれます。一方、温度制御機能のないSトンネルでは、平均温度μが15.9℃、標準偏差σが2.6℃で、μ±σの範囲に64.1%のデータが含まれます(図-4)。このことから、スマートバッチャープラントの自動温度制御機能は、練上がり温度のばらつきを抑制できることが確認されました。

図-4 2016年12月~2017年3月の練上がり温度の分布

 また、練上がり温度を一定の最適な温度に保つことによって、スマートバッチャープラントの最大の目的である吹付けコンクリートの品質の安定と向上を達成することができました。吹付けコンクリートの品質と施工性はコンクリート温度への依存性が強く、特に、コンクリート温度が低い場合、付着性状や初期強度が低下するため、それらを確保するために急結剤の添加量を増やす等の対応が必要でした。

 今回、岩井地区トンネル工事で施工した吹付けコンクリートの配合と施工条件は表-1表-2の通りです。

表-1 吹付けコンクリートの配合

表-2 吹付けコンクリートの施工条件


 付着性状と初期強度を確保する観点から最適な温度である25℃でコンクリートを供給したことで、同じ急結剤添加率のときの温度制御なしの従来工法と比較して、材齢28日の圧縮強度が15%向上したことが確認されました(図-5)。また、付着性状が安定したことによって、施工時の急結剤添加率を1.8%、余吹き率を24%それぞれ低減することができました(図-6、図-7)


図-5 圧縮強度の比較
図-6 急結剤添加率の比較
図-7 余吹き率の比較

 コストについては、従来のバッチャープラントの費用に骨材の加温機能や練上がり温度の自動温度制御機能等の追加設備費用が増額となりましたが、急結剤使用量の低減によるコストダウンの額が追加設備費用を上回ることが確認できました。そのコストダウン効果は、余吹き率の低減による吹付けコンクリート施工数量の減少を加味すると、さらに大きくなるものと考えています。

 今回、岩井地区トンネル工事においてスマートバッチャープラントを適用した結果、スマートバッチャープラントが吹付けコンクリートの「品質向上」と施工費の「コストダウン」という、通常ではトレードオフの関係にある二つの命題を同時に達成できる技術であることが確認できました。今後は、練上がり温度をより正確に制御するための各種システムの改良の他、夏季のコンクリート温度上昇時に対応した材料冷却設備の開発に取り組んでいく予定です。そして、寒地に位置する道路トンネルや北海道新幹線のトンネルだけでなく、北陸新幹線や中央新幹線、全国の山岳トンネル工事への導入を積極的に提案していきたいと考えています。


写真-2 プラントの制御画面
写真-3 スマートバッチャープラント外観

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