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覆工コンクリート脱枠強度管理システム『パルストメーター』を開発

- 「超音波方式」によりコンクリートの状態そのものから強度を推定 -

2019年2月21日

 飛島建設株式会社(東京都港区:社長 乘京正弘)、大栄工機株式会社(滋賀県長浜市:社長 古磯信幸)、およびエフティーエス株式会社(東京都中央区:社長 木村浩之)は、山岳トンネルの覆工コンクリートの施工において、脱枠前にコンクリートが必要な強度を発現していることを確認する超音波方式の脱枠強度管理システム『パルストメーター』を開発しました。

はじめに

 山岳トンネル工事で覆工コンクリートを施工する際,必要な強度の発現を確認してから脱枠を行えば、脱枠直後に強度不足に起因するひび割れや欠けの発生を防止でき、耐久性に悪影響を及ぼすことはありません。今回、超音波方式によりコンクリートの状態そのものから強度を推定し、脱枠時に必要な強度の発現を、実際に打込まれた覆工コンクリートにおいて直接的に確認できる新しい脱枠強度管理システム『パルストメーター』を開発しました。

開発の背景

 脱枠時に必要な強度の発現を、実際に打込まれた覆工コンクリートにおいて確認する方法として、近年は積算温度方式による強度の推定が行われています。積算温度方式とは、コンクリートの強度を材齢と養生温度の関数として表現する考え方に基づくもので、覆工コンクリートの原位置で測定した養生温度を管理することで、あらかじめ行う試験練りにより準備した加水時点からの積算温度との関係式を利用して、覆工コンクリートの圧縮強度を推定します。

 この積算温度方式により精度よく圧縮強度を推定するためには、「積算」という言葉が示すように、覆工コンクリートに対する養生温度を測定し続け、積み上げる必要があります。したがって、加水時点以外で測定を開始する場合や、停電など不測の事態により温度の測定が中断した場合には、積算温度の算出に適切な補正が必要となります。

 今回開発した超音波方式の脱枠強度管理システム『パルストメーター』は、測定箇所のコンクリートの状態そのものから強度を推定するものであり、測定し続ける必要はありません。脱枠する直前に測定して、必要な強度の発現を確認することが可能です。

超音波方式脱枠強度管理システム『パルストメーター』概要

 超音波方式脱枠強度管理システム『パルストメーター』は、覆工コンクリート型枠(セントル)の一部としてセンサを設置し(写真-1)、実際に打込まれたコンクリートに対し超音波の送受信を行います(図-1)

写真-1 覆工コンクリート型枠(セントル)へのセンサ設置状況

■ 写真-1 覆工コンクリート型枠(セントル)へのセンサ設置状況

図-1 センサ設置および測定概略

■ 図-1 センサ設置および測定概略

 超音波によりコンクリートを評価する場合、一般的には伝搬速度が用いられます。伝搬速度は波形の初動の時刻を読み取り、発信時刻との時間差を求め、伝搬距離を時間差で除すことで算出されます。しかし、セントルの一部として設置されたセンサで得られる波形の初動時刻には、コンクリートの材齢に伴う変化を確認することができません(図-2)。これは、超音波が型枠も伝搬していることに他なりません。

 一方、図-3は同じ波形について、縦軸の振幅を統一して示したものです。波形の振幅は、伝搬速度とは異なり、材齢に伴う変化が極めて顕著に表れています。型枠が波形の振幅に与える影響は、材齢に関わらず一定であることから、振幅の変化は、コンクリートの強度の発現によって現れていることになります。実際に、材齢ごとに測定された波形の最大振幅とコンクリートの圧縮強度には高い相関が確認されました(図-4)。つまり、波形の最大振幅からコンクリートの強度を推定できることがわかりました。

図-2 材齢に伴う初動時刻の変化

■ 図-2 材齢に伴う初動時刻の変化

図-3 材齢に伴う最大振幅の変化

■ 図-3 材齢に伴う最大振幅の変化

図-4 波形の最大振幅とコンクリートの圧縮強度の関係

■ 図-4 波形の最大振幅とコンクリートの圧縮強度の関係

 超音波方式脱枠強度管理システム『パルストメーター』は、覆工コンクリートを伝搬する超音波の振幅(最大振幅)から、その時点のコンクリートの強度を推定するシステムです。

現場適用事例

 現場に適用できる現場仕様の検討と、実運用データの取得を目的として、いくつかの現場において適用し検証を実施しました。その一例として、一般国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事での適用事例を紹介します。

 一般国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事(発注者:岩手県)は、岩手県北上市口内町および奥州市江刺梁川地内を工事場所とする、トンネル工(長さ:1,022 m)と道路改良工一式の工事です。この一般国道107号の奥州市江刺梁川から、北上市口内町の区間は、急カーブや急勾配が連続する隘路となっており、交通事故が多発するなど安全で円滑な通行の支障となっていることから、岩手県が平成25年度から梁川~口内工区の整備を進めています(図-5)

図-5 国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事概要

■ 図-5 国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事概要

 まずは、一般的な工程として実施される試験練り(写真-2)において、当工事で使用するコンクリートに対する最大振幅とコンクリートの圧縮強度の関係を取得しました(図-6)

写真-2 試験練り測定

■ 写真-2 試験練り測定

 図-6 最大振幅と圧縮強度の関係

■ 図-6 最大振幅と圧縮強度の関係

 次に、セントルにセンサを設置し(写真-3)、試験運用を行いました。試験練り測定に使用する型枠は、セントルと同じ鋼材で製作し、さらにセンサと共に、試験練り測定で使用したケーブルもセントルへ移設することで、試験練り測定をセントルで再現し、強度の推定精度を確保しています。測定された最大振幅から強度を推定するためのパソコンもセントル内に配置し(写真-4)、オンデマンドで強度を確認することができます。

 写真-3 セントルのセンサ設置箇所

■ 写真-3 セントルのセンサ設置箇所

写真-4 脱枠強度管理用パソコン

■ 写真-4 脱枠強度管理用パソコン

 2017年10月から2018年3月までの間、全部で22ブロックの覆工コンクリートの測定データを得ることができました。その一例として、2017年10、11、12月に得られたデータを図-7に示します。なお、推定強度が最後に急降下するのは、脱枠によりセントルに設置されたセンサが覆工コンクリートから離れたことを示しています。

 一般国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事の覆工コンクリートは、事前のフレーム解析による検討の結果、脱枠に必要な強度は1.1 N/mm2でした。全てのデータにおいて、脱枠に必要な強度である1.1 N/mm2を十分に超えてから脱枠されたことがわかります。

 また、脱枠は全てのブロックにおいて打込み翌日の午前8時頃に行われたことがわかります。当システムで得られる推定強度は、いずれも任意の時点の振幅を測定し強度を推定します。したがって、運用する場合は、このグラフのように連続して測定する必要はなく、脱枠作業に取り掛かる前に、所定の強度に到達しているかを確認すれば良いことになります。実際に、全ての測定結果において、午前8時頃に推定された強度は、所定の強度を十分に超えており、この時点の測定のみで脱枠の可否を判断することが可能であったことがわかります。

図-7 一般国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事における試験運用結果

■ 図-7 一般国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事における試験運用結果

おわりに

 今回開発したこの『パルストメーター』は、山岳トンネルの覆工コンクリートの施工と同様に、型枠を前進させ構造物を連続的に構築していくコンクリートの連続打設工法(スリップフォーム工法や橋梁の張出し架設工法など)にも活用できる技術であり、現場適用を進めております。飛島建設株式会社、大栄工機株式会社、およびエフティーエス株式会社は、今後もこの超音波方式脱枠強度管理システム『パルストメーター』により、安心・安全な山岳トンネルをはじめとする全てのコンクリート構造物の構築に貢献したいと考えています。

ニュースリリースに関するお問い合わせ

  • 飛島建設株式会社 企画本部 広報室
    松尾 和昌 TEL:03-6455-8312

技術・資料に関するお問い合わせ

  • 飛島建設株式会社 技術研究所
    桃木 昌平 TEL:0471-98-7577
  • 大栄工機株式会社 営業部所
    岩井 善紀 TEL:0749-64-0246
  • エフティーエス株式会社 特機営業部
    藤原 貴央 TEL:03-6206-2220