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建設振動対策技術「防振堤」の改良と適用拡大

-伝播経路に設置するだけで振動を低減-

 飛島建設株式会社(東京都港区:代表取締役社長 乘京正弘)は、埼玉大学大学院理工学研究科の松本泰尚教授と共同で、建設工事振動の伝播経路となる地表面に設置するだけで工事振動を低減する「防振堤」のひとつである「質量体」を開発し、2020年3月に「防振堤の実用化*1」として発表しました。この度、質量体の施工性と耐久性の向上を目的とした仕様変更を行うとともに、質量体では低減効果が得られにくい15Hz以下の振動にも適用可能な「振動系」を新たに開発し、製品展開を可能にしました。

 *1 建設振動対策技術防振堤の開発と実用化

  https://www.tobishima.co.jp/press_release/detail/20200409131547.html

 従来の防振堤である「質量体」は、敷鉄板の上に大型土のうを複数設置するという構成となっていました。大変シンプルで施工コストが安いといったメリットがある反面、大型土のうの作成が必要であり、また数年で劣化してしまうため転用が難しいといった課題がありました。そこでこの課題の解決策として、鋼製枠の中にRC(再生骨材)を充填する仕様とすることにより、現場へ搬入後そのまま設置ができ、かつ複数の現場間での転用を可能にしました。
 そして、質量体では低減効果が得られにくい15Hz以下の振動に対しては、新たに波の干渉によって低減効果を発揮する「振動系」を開発しました。

 防振堤には「質量体」と「振動系」の2種類があり、求められる低減効果や現場条件によって使い分けを行います。
◇「質量体」は接地面の剛性と質量によって地表面の変位を拘束することで振動を低減します。t 312 mm×w 932 mm×l 1,847 mmの鋼製の枠にRCを充填したおもりを複数積層し、質量体を重ねる際は間にゴムシートt =10 mmを設置してがたつきを防止します。低減効果は設置する規模や地盤条件によって変動しますが、約15 Hz以上の幅広い振動に対して効果を発揮します。(写真-1)
◇「振動系」は基礎、ばね、おもりから構成され、振動系が共振することで発生する二次波が入力波に干渉することで振動を低減します。おもりには質量体を使用することができ、おもりとばねの組合せによって固有振動数を調整します。振動系による低減効果は固有振動数近傍の振動数で得られるので、受振側の建物の固有振動数を低減対象として適用することで高い低減効果が期待できます。(写真-2)

 0.45m3級油圧ショベルの走行により発生する振動を対象として、質量体の設置範囲を2列×4列(約2 m×8 m)、高さを1~4段(面密度約475~1,900㎏/m2)として低減効果を比較しました。(写真-3)
 図-1に質量体の中心から4m地点での振動加速度レベルの周波数特性を示します。質量体の設置によって12.5 Hz以上の振動加速度レベルが低減したことが確認できます。また、面密度が高いほど低減効果は大きく、特に16~25 Hzの低減量が顕著に増加していることがわかります。
 図-2に20 Hz帯域の振動加速度レベルの距離減衰を示します。ここで、図内の線で結んだ結果は加振中央と質量体の中央を結ぶ直線方向での測定結果を示し、結んでいない結果はそこから側方にずれた位置での測定結果を示しています。質量体の背面から約5 mの範囲で安定して振動が低減し、高さが4段の場合では3~5 dBの低減効果が得られました。

 加振器を使用して振動系の固有振動数と一致する4.7 Hzの正弦波加振を行い、振動系を1基または2基設置した場合の低減効果を比較しました。(写真-4)
 図-3に振動系の中心から2 m地点での加速度の時間変動を示します。加速度の実効値は、未設置時と比較して振動系が1基の場合は22 %(2 dB)低減し、2基の場合は39 %(4 dB)低減しました。
 図-4に5 Hz帯域の振動加速度レベルの距離減衰を示します。図内の線で結んだ結果は、加振中央と振動系の中央を結ぶ直線方向での測定結果を示し、結んでいない結果はそこから側方にずれた位置での測定結果を示しています。振動系が2基の場合、振動系の背面から約5 mの範囲での低減量は2~4 dBとなりました。

 北千葉広域水道企業団発注の導水管更新に伴うトンネル築造工事において、0.45m3級油圧ショベルの掘削作業で発生する振動を対象に質量体を適用しました。設置数は40基(1列×10列×4段)、設置延長は20mとし、質量体の設置前後で振動レベルを比較したところ、16 Hz以上の振動数で5 dB前後の低減効果を確認しました。(写真-5、図-5、図-6)

 防振堤については特許取得済み*2, 3の技術であり、この度株式会社藤崎商会(広島市中央区:代表取締役 藤崎和彦)と実施許諾契約を締結し、同社からの販売、レンタルによる展開を可能にしました。今後はNETIS登録による技術の活用促進を図るとともに、適用実績を蓄積しながら、地盤条件と低減効果の関係についても検証を続けていきます。

*2 特許番号:特許第6240842号、発明の名称:地盤振動低減工法、登録日:2017.11.17
*3 特許番号:特許第6785535号、発明の名称:地盤振動低減装置、登録日:2020.10.29

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