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施工技術

飛島の技術-建築のメインビジュアル

低騒音・低振動・低粉塵型目荒らし「ブラストキー工法」

■技術概要
 近年、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一環として、建築分野では建築物の長寿命化や建築ストックの有効活用が重要なテーマとなっています。 建築ストックの有効活用するためには、耐震改修のみならず、増改築を行うことが多く、コンクリートの柱、梁、壁などの既存部材に、新たにコンクリート部材を接合する必要があります。 このコンクリート同士の接合には、既存部材と新設部材を一体化させる必要があるため、コンクリートを電動ハンマで斫って凹凸を形成するチッピング工法と呼ばれる目荒らしが使われていました。 しかしながら、チッピング工法は工事の時に騒音・振動・粉塵が多く発生が伴います。
 ブラストキー工法は、湿式コアドリルでコンクリートの既存部材に凹凸を形成する、チッピング工法に代わる低騒音・低振動・低粉塵型の目荒らしです。 施工環境の改善、産業廃棄物の削減が期待できる、地球環境に配慮した目荒らし工法です。

■施工状況
 ブラストキー工法は、湿式コアドリルでコンクリート面を穿孔します(写真1参照)。そのため、チッピング工法のようにコンクリート面を打撃しないことから、施工時の環境は、静かで粉塵もほぼゼロです。
 穿孔後の形状は直径52mm、深さ6mm程度です。増し打ち壁の接合面をはじめ、コンクリート同士を接合するあらゆる部位に適用可能です(写真2参照)。

写真1 ブラストキー施工状況イメージ

写真1 ブラストキー施工状況

※画像をクリックすると拡大画像がご覧いただけます。

写真2 増し打ち壁の接合面イメージ

写真2 増し打ち壁の接合面

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■施工環境
 飛島建設技術研究所の改修工事でブラストキー工法を適用しました。 図1のように騒音と振動は、1階の施工面の隣室や上階で計測を行い、粉塵については施工面近傍で計測を行いました。 ブラストキー工法は打撃を行わないため、固体伝搬音を抑制できることからチッピング工法より騒音・振動が大きく低減されました(図2、図3参照)。 また、粉塵は、ほとんど発生することはありませんでした(図4参照)。

図1 測定位置 イメージ

図1 測定位置

図2 騒音測定結果 イメージ

図2 騒音測定結果

図3 振動測定結果 イメージ

図3 振動測定結果

図4 振動測定結果 イメージ

図4 振動測定結果

■産業廃棄物の削減
 チッピング工法に比べ,産業廃棄物の量が約1/3に削減できます。(当社比)

産業廃棄物の削減イメージ

産業廃棄物の削減

■適用範囲
 施工部位:コンクリート同士の接合面
 コンクリート強度:既存建物のコンクリート強度
           普通コンクリート 10N/mm2以上
           軽量コンクリート 13.5N/mm2以上

■施工実績(2023年11月1日現在)

施工実績一覧

■YouTube動画

ブラストキーYouTube動画 QRコード

ブラストキーYouTube動画 QRコード

■審査・評定
・一般社団法人 建築研究振興協会:技術(性能)評価取得(BRP-R1803014)

評価書

・耐震総合安全機構:JASO推奨工法 認定番号016

■外部団体からの表彰・外部団体への登録状況
NETIS(国土交通省 新技術情報提供システム)登録技術


技術名称 低騒音・低振動・低粉塵型目荒らし「ブラストキー工法」
NETIS番号 KT-230216-A

■問い合わせ先
 ブラストキー工法は、ブラストキー研究会により、施工・監理者講習,設計講習を行い、修了証を発行しています。お問い合わせは、下記のブラストキー研究会事務局までお願いします。


ブラストキー研究会事務局
 株式会社E&CS内 担当:今美菜子
 〒213-0012 神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP西棟
 E-mail:minakokon@kk-ecs.co.jp

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  • Abe, T., Hiwatashi, T., Kubota, M., Takase, Y. and Katori, K.: FORMULA FOR SHEAR STRENGTH OF CLINDRICAL SHEAR-KEY APPLIED SEISMIC RETROFITTING, 16th World Conference on Earthquake, No.611, 2017. 1

※ブラストキー工法は、飛島建設株式会社と東亜建設工業株式会社の共同開発工法です。