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表⾯ひずみ法によるPC鋼材残存緊張⼒の推定手法の開発について

―正確+低コスト:コンクリート道路橋の老朽化対策に寄与―

東京理科大学
株式会社 高速道路総合技術研究所
飛島建設株式会社
東電設計株式会社

 このたび、東京理科大学(東京都新宿区:学長 松本洋一郎)、高速道路総合技術研究所(東京都町田市:代表取締役社長 奥脇郁夫)、飛島建設株式会社(東京都港区:代表取締役社長 乘京正弘)、東電設計株式会社(東京都江東区:代表取締役社長 大河原正太郎)は、表⾯ひずみ法によるPC鋼材残存緊張⼒の推定手法を開発、本日より販売開始いたします。
 この手法を活用すれば、PC鋼材を用いた道路橋の老朽化の進展を正確に、しかも非常に低コストで推定できることになり、防災上、非常に大きな役割を果たせると考えております。

 わが国に現存する、長さ15m以上のコンクリートの道路橋は約15万橋とされておりますが、そのうち4割に当たる約6万橋がプレストレストコンクリート(PC)という形式で作られています。このタイプの道路橋ではコンクリートのひび割れの発生を防ぐために、主桁(しゅげた)の長さ方向(橋軸方向)にあらかじめ圧縮応力をかけますが、その方法として引っ張った状態の鋼材(PC鋼材)を主桁に沿って埋め込み、主桁の両端で固定する方法(ポストテンション方式)が多く採用されております(図1)。

図1:ポストテンション方式(ⒸPC建協)

 このような道路橋では近年、ひび割れの発生が確認されはじめており、そのメンテナンスにおいてPC鋼材の緊張力がどれだけ残っているかを正確に測定する必要があります。従来ではコンクリート内部に切り込み等を入れる破壊検査、または微破壊検査が代表的な方法とされてきましたが、これらの方法では切り込みによって圧縮応力を解放させる要因になり、また同じ箇所で繰り返して調べることができないという問題もありました。そこで、経年劣化により自然に生じるひび割れに着目、活用することにしたものが今回開発した手法です。

 この手法は主桁の長さの直角方向(橋軸直角方向)にひび割れが生じているという前提ですが、そうしたひび割れを利用し、コンクリートに圧縮応力を発生させているPC鋼材の引張力を推定するものです(図2:原理の概要、図3:設置の様子)。普段比較的軽い自動車が走行している状態では閉じているひび割れが、ダンプカーなど重い自動車が走行する時に、残っている圧縮応力よりも大きくなった引張応力によって開く動きを測定して、PC鋼材の引張力を推定します(図4:計測器設置の概要、図5:計測データの例)。この方法では構造物を新たに傷つけることなく、同じ開所で繰り返して圧縮応力を推定することができ、PC鋼材の引張力がさらに低下する状態を追跡すること、すなわち経年劣化の確認なども可能です。

図2:原理の概要図    図3:設置の様子
図4:計測器設置の概要 図5:計測データの例
(図2~図5は四社による報告書「PC橋の残存プレストレス力の推定に基づく健全性評価に関する研究」より)

 この手法は、東京理科大学理工学部土木工学科 加藤佳孝教授、高速道路総合技術研究所、飛島建設、東電設計の共同研究により開発され、このたび実用化に至ったものです。具体的には、約1/6スケールの試験体の実験および実際の橋の主桁を模擬した試験体の実験から、PC鋼材の緊張力の推定誤差は2%以下と非常に高い精度を達成していることを確認しております(現在特許出願中。特開2020-091162)。また、本手法の大きな特徴として、計測にひずみゲージやπ型変位計といった安価な計測器や、長期の耐久性のある光ファイバの利用が可能であり、低コスト化が実現しています。
 PC道路橋の多くは高度成長期に集中的に建設されており、国土交通省の管理する道路橋のうち、建設後50年以上経過するものの割合は、2021年で約23%、2031年では約53%と、老朽化が加速度的に進展する見込みです(いずれも長さ15m以上の道路橋)。私どもは、本手法を積極的にご活用いただくことにより、そうした老朽化していくPC道路橋の効果的なメンテナンス、そして広く社会防災に寄与してまいりたいと考えております。

以 上

本件の内容および販売などのお問い合わせにつきましては、基本的に東電設計株式会社で承ります。共同研究など各参加者の詳細につきましては、以下の各問合せ先までお願いいたします。

広報室 担当:長谷川、田中
TEL:03-6372-5692
E-Mail: msr-tanaka@tepsco.co.jp

広報部広報課
TEL:03-5228-8107
FAX:03-3260-5823
E-mail: koho@admin.tus.ac.jp

総務経理部総務課
TEL:042-791-1621
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企画本部広報室 担当:松尾
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