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IPネットワークを活用したトンネル坑内可視化システムを開発

トンネル工事現場における人・重機・施工サイクルの一元管理を実現

 飛島建設株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:築地 功)は、工事現場に構築したIPネットワークを基軸として、各種ネットワーク機器やデバイスを組み合わせることで、トンネル工事現場における人や重機の位置および稼働状況の一元管理を実現するトンネル坑内可視化システムを開発しました(図1、図2)。また、本システムを実際の山岳トンネル工事現場に導入し、現場状況の一元的な把握が施工管理業務の効率化および高度化に有効であることを確認しました。

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図1 本システムのダッシュボード画面(職員位置の可視化)

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図2 本システムのダッシュボード画面(施工サイクルの可視化)

 トンネル工事現場などの地下空間や屋内空間では、GNSS衛星からの電波を受信できないため、人や重機の位置の特定が難しいという課題がありました。この課題に対し、Bluetooth Low Energy(BLE)などの省電力無線通信技術を利用した位置管理システム※1などが開発・実用化されているものの、①専用ビーコンの所持および適切な管理が要求されること、②専用受信機の設置およびトンネル進行に伴う増設・延伸作業が要求されることから、機器コストと運用コストの増加が新たな課題となっていました。
 一方で、山岳トンネル工事の坑内ネットワークの構築と延伸においては、①Wi-Fi電波の到達距離がアクセスポイント(AP)から数十mと短いこと、②発破で発生する飛石により機器が損傷する可能性があり切羽近傍でのAP常設が困難であることから、切羽周辺で作業する職員・作業員やトンネル重機はWi-Fiに接続することができず、インターネットを利用できない状況が課題となっていました。
 当社はこれらの課題に対し、構築した坑内ネットワークを基軸としつつ、①汎用ネットワーク機器の活用、②IEEE 802.11ah※2(Wi-Fi HaLowTM)の採用、の二点のアプローチにより、人・重機の位置ならびに稼働状況の把握を可能とするトンネル坑内可視化システムを開発しました(トンネル工事現場におけるWi-Fi HaLowTMの導入事例としては、国内初※3)。

 ※1 飛島建設株式会社:DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環としてスピーディーなシステム開発とシームレスなシステム間情報連携を実現する山岳トンネル建設工事向けIoTプラットフォーム「IoT-Smart-CIP」を開発

 ※2 IEEE 802.11ah:920MHz帯を利用した新しいWi-Fi規格の一つで、IoT向けの通信手段として期待されています。主な特長として①約1kmという長距離通信性能と高い回折性を有しカバレッジ拡大が可能、②Wi-Fiと同じIPフレームを使用した汎用通信が可能、③数Mbpsのスループットを有し画像・映像の送受信が可能、④免許不要で自営設置が可能、などが挙げられます。

 ※3 当社調べ、2026年7月時点

 ダッシュボード上で情報を可視化することで、現場状況の網羅的かつ時系列での把握が可能となり、作業の効率化やトラブルの早期発見などに有効です。また、いつでも・どこでも・どのデバイスからでも表示が可能です。さらに、可視化情報は記録されるため、分析や教育など多様な用途に活用することも可能です。

 現場ネットワーク構築において設置した汎用ネットワーク機器をそのまま活用できるため、本システムのための専用機器の導入や設置作業は不要です。
 また、トンネルの掘削に伴いWi-Fi HaLowTM機器が移動・接続切り替えを行うため、従来必要だった機器の移設作業が不要となります。さらに、職員は専用ビーコンなどを携帯する必要がありません。

 Wi-Fi HaLowTMを採用することにより、これまで通信環境の確保が難しかったトンネル切羽付近でのインターネット利用が低コストで実現できます。
 1台の親機に対して複数の子機を接続できる仕様であることから、さまざまな重機をまとめて管理できます。また、障害物の多い環境でも通信が可能であり、アンテナの設置自由度が高いことも特長です。さらにIP互換性を有していることから、既存のIPネットワークとのシームレスな統合が可能であり、重機稼働状況の把握だけでなく、重機に搭載したネットワークカメラの映像配信や重機稼働データの収集といった形で、ネットワークインフラを自由に活用可能です。

 本システムは、汎用ネットワーク機器やオープンソースソフトウェアを活用して構築されています。そのため、特定ベンダーのシステムやサービスに依存することなく、将来的な機能追加やシステム拡張にも柔軟に対応できます。

 本システムは、現場ネットワークを構成する汎用ネットワーク機器、Wi-Fi HaLowTM機器、サーバにより構成されています。システム構成図を図3、採用した汎用APを図4に示します。

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図3 本システムの構成

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図4 本システムで採用した汎用AP

 現場の状況やニーズに合わせて、職員が所持する端末(スマートフォン)の接続情報を利用した、以下の二つの方法が利用可能です。
1. 汎用ルータを用いた大局的な位置把握
 端末が、どのネットワークに参加しているかを検知することで、「トンネル坑内」「仮設ヤード」「現場事務所」などエリア別に大局的な位置把握が可能です。
2. 汎用APを用いた詳細な位置把握
 端末が、どのAPに接続しているかを検知することで、AP設置間隔(約100m)の分解能で位置把握が可能です。

 テールピース台車に設置したWi-Fi HaLowTMボックス(親機)を図5に示します。また、吹付け機に設置した子機を図6に示します。
 トンネル重機が稼働中に、Wi-Fi HaLowTM子機が親機と長距離無線通信を行うことによって、重機の稼働を検知します。
 Wi-Fi HaLowTM 親機は坑内APと無線ブリッジ接続を行うことで、インターネットに接続します。さらに、ボックスに内蔵した加速度センサを用いて発破を検知します。

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図5 テールピース台車に設置したWi-Fi HaLowTM親機

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図6 吹付け機に設置したWi-Fi HaLowTM子機

 本システムを、当社が施工を手掛ける山岳トンネル工事現場に導入し、システムの有効性を検証しました(写真1)。
 検証の結果、GNSSによる位置把握や通信環境の確保が難しいトンネル工事現場においても、本システムを通じたデータ連携の自動化、稼働状況等(人、建設機械等)の把握による工程の最適化や予実管理に有効であることを確認しました。これらはi-Construction 2.0※4やICT施工StageⅡ※5の主旨にも合致するものです。

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写真1 本システムの利用状況

※4 i-Construction 2.0:国交省による、建設生産システム全体の生産性向上の推進・深化のアクションプランであり、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」の三つの柱で構成されています。
※5 ICT施工Stage II:国交省による、建設現場のあらゆる活動のデータによる可視化と、それによる建設現場全体の最適化を目指す取り組み。

 今後、本システムの山岳トンネル工事現場への適用拡大を進めるとともに、現場データの蓄積や追加機能の拡充を進めてまいります。また、それらを通じてデータドリブンな施工管理プラットフォームへと発展させていき、さらなる施工管理業務の効率化・高度化や、工事現場の安全性向上を目指します。

飛島ホールディングス株式会社 コーポレート・コミュニケーション部(飛島建設 広報担当) 
TEL: 03-6455-8312

飛島建設株式会社 技術研究所 技術開発部 
TEL : 04-7198-1101