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DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環としてスピーディーなシステム開発とシームレスなシステム間情報連携を実現する山岳トンネル建設工事向けIoTプラットフォーム「IoT-Smart-CIP」を開発

- 第一弾として入坑管理・建設機械接近警告システムを開発・適用 -

 飛島建設株式会社(東京都港区:社長 乘京正弘)、マック株式会社(千葉県市川市:社長 宮原宏史)、および株式会社エム・シー・エス(山梨県韮崎市:社長 河西哲夫)は、各種自動管理システム開発の迅速化と、システム間情報連携の円滑化を実現する山岳トンネル工事向けのIoTプラットフォーム「IoT-Smart-CIP(Construction Information Platform)」を開発しました。また、本プラットフォームに基づく開発の第一弾として、山岳トンネル建設工事の入坑管理システム、および、建設機械と作業員の接近警告システムを開発・適用しました。当社は中期5ヵ年計画の中でデジタルテクノロジーを駆使し、会社全体のビジネス プロセスを再構築するためにDXを推進しています。

 建設工事においては、熟練技能労働者の大量離職などによる労働力不足が懸念される中、安全性および生産性の向上が喫緊の課題となっています。この対応として、人・機械・環境の情報に基づき、安全性や生産性の向上につながるシステムの開発が進められています。しかしながら、これらは1つの現場の課題(建設機械との接触防止、労働環境の管理、体調管理など)に対応する、独立したシステムであることが多くなっています。そのため、複数の課題に対応するためにそれぞれシステムを適用すると、複数のシステムの保守・管理に対する職員の労力の増大や、システム間のデータ連携が困難、といった課題がありました。一方で、システムの開発には多大な労力と時間がかかります。そのため、迅速な対応が必要な場合は既存のシステムでの対応にとどまることが多いのが現状でした。

 こうした課題を効率的に解決するため、各種情報を統合的に取得し活用できるIoT開発基盤が必要と考えました。今回、人・機械・環境の情報を容易に取得し、安全性や生産性の向上を目的とした各種自動管理システムの開発の迅速化と、開発システム間の情報連携の円滑化を実現する、IoTプラットフォーム「IoT-Smart-CIP」を開発しました(図-1参照)。さらに、本プラットフォームを活用し、山岳トンネル建設工事において、入坑者の氏名・人数を自動管理する入坑管理システム、および、建設機械周辺の人の存在を監視し警告する建設機械接近警告システムを開発し現場に適用しました。

 IoT-Smart-CIPは、センサ部であるIoTゲートウェイと、サービス部であるサーバとで構成されます(図-2参照)。

 IoTゲートウェイは、機械が出力する信号や、人や機械に付加したデバイスの信号を計測するセンサとしての機能と、それらの情報をサーバに送信する機能を有しています。このIoTゲートウェイにより、各種情報を容易に取得することが可能です。

 サーバは、IoTゲートウェイにより送られたデータを集約し、各種管理のためにデータを分析・提供するサービス機能を有します。分析された情報は、インターネットを介して遠隔で確認することが可能です。

 IoT-Smart-CIPにより、データ取得とサーバでの集約が容易に可能となるため、得られたデータを分析するサービスアプリケーションの開発のみで新たな管理システムが実現でき、迅速なシステム開発を可能としています。

 なお、IoT-Smart-CIPでは処理用のローカルサーバとデータバックアップ用のクラウドサーバの2つのサーバを使用します。山岳トンネル建設工事に多い、インターネットの通信速度が期待できない現場においても、ストレス無く処理できるようにローカルサーバにおいて処理を行います。

 以上のように、IoT-Smart-CIPにより、システム開発の迅速化が図られます。また、これまで複数のシステムで管理されたバラバラな情報が、統合的に集約され分析可能となることから、管理労力の最小化と管理効果の最大化が図られ、より合理的な管理が実現できます。さらに、多くの情報を集約できることから、情報のビッグデータ化によるAIへの発展も期待できます。

 開発したIoT-Smart-CIPを活用し、山岳トンネル建設工事の入坑管理システム、および建設機械接近警告システムを開発し。北海道新幹線 ニセコトンネル他工事に適用しました。

 北海道新幹線、ニセコトンネル他工事(発注者:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)は、北海道虻田郡ニセコ町を工事場所(図-3参照)とする、北海道新幹線新青森起点274km489m~276km880m 間のトンネル(延長2,270m)及び路盤(延長121m)の工事です(図-3参照)。

 山岳トンネル建設工事では、災害発生時の対応等のために、入坑者氏名および入坑人数を常時確認できる必要があります。従来は、坑口前に設置された各人の入出坑を示す札を手動にて変更していました(図-5参照)。この方法では、入出坑の変更ミスの発生、入出坑時の変更のための時間的ロスの発生、入出坑表示板が設置されている場所以外では確認困難、といった課題があり、この自動化・見える化が求められていました。

図-5 手動による入坑者表示の一例
■ 図-5 手動による入坑者表示の一例

この課題の解決方法として、IoT-Smart-CIPに基づく入坑管理システムを開発し適用しました。

 本管理システムは、職員と作業員全員に各所持者固有の識別情報を常時発信するBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンを所持させ、その電波を坑口部で検知することで、入坑者を判断するものです。本現場では、職員・作業員がBLEビーコンの所持が容易となるよう、ビーコンを収納できるポケットを付けた専用の反射チョッキを製作しました(図-6参照)。また、防音ハウス内坑口部および防音ハウス外にそれぞれ、IoTゲートウェイを設置し、入坑および退坑の検知センサとして利用しました(図-7参照)。

 本システムでは、職員・作業員が所持したBLEビーコンの電波を、入坑検知部または退坑検知部であるIoTゲートウェイが受信した際に、その電波情報を逐次サーバに送ります。サーバは得られた電波情報から、職員・作業員氏名を識別し入坑または退坑と判断します。また、その情報を入坑者表示モニタに表示させます(図-8参照)。なお、この情報は遠隔地でもインターネットを介してリアルタイムに確認できます(図-9参照)。

 本システムにより、自動的かつ確実な職員・作業員の入坑管理と、遠隔での入坑者の確認を実現しました。

 山岳トンネル建設工事においては狭隘な閉空間に大型の建設機械が輻輳するため、建設機械と作業員との接触災害のリスクが高くなっています。そのため、工事の安全性を高める目的で、建設機械周辺を監視し、作業員を迅速に検知し確実に警告する技術が求められています。

 これまでに、作業員に電波を発信するタグを所持させるとともに、建設機械にセンサを設置し、その電波強度から作業員と建設機械の距離を推定することで、作業員の接近を警告するシステムなどが開発されてきました。このようなシステムは安全性の向上に寄与しており、多くの現場に導入されています。しかしながら、タグの所持や管理、システムへの登録などによる、職員・作業員の労力の増加が課題でした。

 この課題の解決方法として、IoT-Smart-CIPに基づく建設機械接近警告システムを開発し適用しました。

 本警告システムは、従来のシステムと同様に電波を利用して建設機械周辺の作業員を検知・警告するものです。作業員に所持させる電波発信タグは、前述の入坑管理システムで使用しているBLEビーコンを利用します。また、対象の建設機械に設置する電波を受信するセンサも、同様に入坑管理システムで使用しているIoTゲートウェイを利用します。得られた電波の強度から作業員と建設機械の距離を推定し、設定距離以下になると警告するシステムです(図-10参照)。

 ここで、建設機械が大型になると、機械自身が電波の障害物となり、死角が生まれます。そのため、機械の前後左右4カ所にセンサを配置して死角を無くすようにしました。また、建設機械の運転手自身もBLEビーコンを所持していると、警告対象となってしまいます。そのため、運転席上部に運転手検知用のセンサも合わせて設置し、自動的に運転手を警告対象から除外することとしました(図-11参照)。

 図-12に、建設機械に設置している接近監視用モニタ画面の一例を示します。本システムでは、複数のセンサを使用していることから、接近者の方向が判別できます。さらに、入坑管理システムとの連携により、BLEビーコンの電波から接近者の氏名も識別可能となっています。

 本警告システムでは、電波発信タグとして入坑管理システムと同じBLEビーコンを使用しています。そのため、BLEビーコンの所持やその管理に関する労力が新たに発生しません。また、IoT-Smart-CIPに基づくシステムのため、センサとなるIoTゲートウェイの増設やそれらの連携が容易です。さらに、システム間の連携も容易で、本警告システムでは、入坑管理システムで登録された識別情報を共有することで、新たに登録することなく接近者氏名の表示が可能となっています。

 今後、今回開発した入坑管理システムおよび建設機械接近警告システムを、「BLEを用いた入坑者見える化システム:VisiBLE(ビジブル)」として販売していく予定です。

 また、IoT-Smart-CIPをさらに活用し、作業員のバイタルデータに基づく健康状態管理や建設機械の稼働時間・負荷情報に基づくメンテナンス管理など様々な管理へ応用していきます。さらに、統合的な情報基盤であるメリットを活かし、各種管理データとAIを活用した更なる安全性・生産性向上のためのシステム開発にチャレンジしていく予定です。

・飛島建設株式会社 企画本部 広報室
 松尾 和昌 TEL:03-6455-8312

・飛島建設株式会社 技術研究所
 松田 浩朗 TEL:04-7198-7572

・マック株式会社  開発部
 野口 幸一 TEL:047-371-3191

・株式会社エム・シー・エス 本社
 河西 哲夫 TEL:0551-21-2000