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「木造用リング摩擦ダンパー」壁倍率2.3倍 国土交通省大臣認定取得

 株式会社E&CS(神奈川県川崎市:社長 沼口栄助)と飛島建設株式会社(神奈川県川崎市:社長 伊藤寛治)は、日本発条株式会社(神奈川県横浜市:社長 玉村和己)と共同で、木造住宅用制振摩擦ダンパー『木造用リング摩擦ダンパー』を開発し、2015年8月19日に国土交通省より壁倍率2.3倍※1(認定番号 FRM-0516)を取得しました。

 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震をはじめ、日本各地で頻発する地震に対し、高い耐震性能を有する木造住宅を望むお客様が増えました。従来の木造住宅では、余震等の繰り返しの地震でビスの抜けや筋かいの損傷等により、建物の耐震性能が低下する傾向がありました。そこで、”リング摩擦ダンパー“を木造住宅に適用し、壁倍率の大臣認定取得を目的とした開発に着手しました。その結果、地震時の建物の揺れを低減するだけでなく、繰り返しの地震や大規模地震においても、木造住宅の損傷を抑えることが可能な制振ダンパー『木造用リング摩擦ダンパー』を開発致しました(写真1)。
  摩擦系の制振ダンパーである『木造用リング摩擦ダンパー』は、温度依存性※2および速度依存性※3が小さいため、国土交通省が定める壁倍率取得要件に適しており、国土交通省より壁倍率2.3倍が認定されました。この「木造用リング摩擦ダンパー」を、従来の筋かいと置き換えるだけで、木造住宅の耐震性能は大きく向上します。

 木造用リング摩擦ダンパーの制振装置部は、C形リングと呼ばれる円環状の鋼材をロッドにはめ込み(写真2、図1)、ロッドとC形リングの摩擦により、減衰効果を得る機構となっています。摩擦が生じる機構は、ロッドの外径がC形リングの内径より大きいことから得られるC形リングの締付力(図1)により、摩擦力が発生する仕組みとなっています。
 この制振ダンパー部に長さ調整用鋼管(ダンパーベース)を取り付け、木造住宅に適した形状としました(写真3、4)。また、試験結果は繰り返しの変形に対しても安定した履歴曲線を描いています。

■ 写真2 木造用リング摩擦ダンパーの制振装置部

写真2 木造用リング摩擦ダンパーの制振装置部

■ 図1 摩擦が生じる機構

図1 摩擦が生じる機構

■ 写真3 木造用リング摩擦ダンパー全体(試験状況)

写真3 木造用リング摩擦ダンパー全体(試験状況)

■ 写真4 木造用リング摩擦ダンパー全体(取付状況)

写真4 木造用リング摩擦ダンパー全体(取付状況)

 『木造用リング摩擦ダンパー』は、摩擦ダンパーであることを最大限に活かした(表1)木造用制振ダンパーです。

  1. 国土交通省大臣認定 壁倍率2.3倍を取得しました。その結果、以下の項目が可能になります。
    • 構造部材として扱えます。
    • 従来と同じ設計手法で確認申請が行えます。また、制振建物となるため、高い耐震性能が期待できます。
    • その他の構造部材(建築基準法施行令第46条第4項表1に定める軸組み他)と併用する場合は、壁倍率5.0を限度として両者の壁倍率を加算できます。
  2. 温度依存性が小さいため、外気温に関わらず一年を通して一定の性能が確保できます。
  3. 構成部材が少なく、取付が容易です。
  4. 鋼材の摩擦力を使用した制振ダンパーのため、地震後の部品交換を必要としません。
    そのため、余震をはじめとする繰り返しの地震に対応が可能であり、原則としてメンテナンスフリーです。
  5. 想定を超える超大規模地震の時は、ストローク・エンドにより、鋼製筋かいとして機能します。
    これにより、避難する時間を確保し、人命を守ります(図2)。

■ 表1 木造用制振ダンパーの特徴比較

 摩擦系オイル系鋼材系粘弾性系
機構摩擦滑りオイルの管路絞り抵抗塑性変形せん断抵抗
材料金属系、潤滑材作動油鋼材高分子化合物
減衰力に関係
する因子
変位速度変位速度および変位
壁倍率取得可否
(大臣認定)
取得可能取得が難しい取得可能取得が難しい
ダンパーの
位置づけ
構造部材として扱える付加価値として扱える構造部材として扱える付加価値として扱える
設計法静的設計(従来設計が可能)
動的設計も可能
主に動的設計※4静的設計(従来設計が可能)
動的設計も可能
主に動的設計
耐久性
繰り返しの地震にも対応繰り返しの地震にも対応交換を考慮繰り返しの地震にも対応
その他風および地震に対して揺れの低減が可能主に地震に対してのみ揺れを低減交換を考慮した点検口の設置設置場所の環境(温度)を考慮

■ 図2 ストローク・エンドのイメージ図

・柱、土台、桁の断面寸法は105mm×105mm以上
・柱の間隔は芯々間距離で910mm
・横架材間の内法寸法は2650~2850mm

 国土交通省大臣認定に関わる一連の試験は、(一財)建材試験センターで実施しました。摩擦ダンパーの履歴エネルギー(履歴内部の面積)は在来の筋かいより非常に大きいことが特徴です(図3)。そのため、本ダンパーは地震エネルギーを効率よく吸収することで、建物の変形および損傷を防ぎます。

■ 図3 各耐力壁の履歴曲線イメージ

 2015年12月末現在、木造用リング摩擦ダンパー 採用件数 2件、採用本数 6本

 木造住宅メーカーに販売する流通経路を確立することで、来年度300本、再来年度1000本を目指す。

  1. ※1 地震力や風圧力に抵抗する耐力壁の強さを表し、壁倍率2.3の壁は、壁倍率1の壁の2.3倍の耐力を有する。
  2. ※2 温度依存性・・・ダンパーの温度により、減衰力や剛性等の構造性能が決定されること。
  3. ※3 速度依存性・・・地震時にダンパーが稼働する速度により、減衰力や剛性等の構造性能が決定されること。
  4. ※4 動的設計・・・時々刻々と変化する地震力を建物に与え、建物の変形等を求めた結果より設計する手法のこと。

・株式会社E&CS トグル制震事業部 技術営業部 担当:佐藤
 〒213-0012 神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP
 TEL:044-829-6726

・飛島建設株式会社 経営企画室 広報室 担当:松尾
 〒213-0012 神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP
 TEL:044-829-6751