NEWS RELEASE
ニュースリリース

飛島建設株式会社(社長:伊藤 寛治)および株式会社藤崎商会(社長:藤﨑 和彦)は、山岳トンネル建設工事の発破掘削により発生する超低周波音の制御を可能とする、発破超低周波音制御装置“TBIレゾネータ Type-F”(以後、TBIレゾネータ)を開発しました。
従来の発破音対策技術として、防音扉や防音壁などの遮音による手法が用いられてきましたが、低周波音領域の遮音量が十分でないことが課題でした。特に20Hz以下の超低周波音は、窓ガラスや建具、人形ケースなどのがたつき現象を引き起こし、発破音に対する苦情の主要な原因となっていました。TBIレゾネータは共鳴現象を利用することにより、超低周波音の効果的な消音を実現しました。さらに、レールを利用した可動式構造とすることで、消音効果が最大となるよう現場での設置位置を自在に調整することを可能としました。
■ 写真-1 TBIレゾネータ
20Hz以下の超低周波音に対して消音効果を得るために必要な管延長は、例えば8Hzでは約10m、4Hzでは約20mで大規模となり、トンネル内での設置スペースの確保が課題となります。TBIレゾネータは音響管を直管形状または折返し形状にしてトンネル縦断方向に配置することで、スペースの限られたトンネル内に大規模構造の音響管を設置することを可能にしました。
また音場を制御して消音効果を得るためには、音響管を適切な位置に設置する必要があります。TBIレゾネータは、音響管をレール上に設置した架台に搭載することで、車両の走行路を確保しながらトンネル縦断方向に対して可動式の構造としています。これにより、設置位置を調整して消音効果を最大限に発揮することが可能となります。
音響管の開口から入射した音波は、閉口で反射されて開口へと戻ります。この音響管内の往復で位相が1/2波長遅れ、音源からの音波に対して逆位相となることで打ち消しあいます。この音響管による消音効果は、音響管の開口位置と音場の関係によって大きく変動する性質があります。
ここで、主管内に音響管を設置する場合を考えます。②のように、音響管の開口が振動面からλ/2となる場合、音響管を反射した音波は振動面で節となり、主管内の音圧分布が変化して高い消音効果を得ることができます。逆に③のように、音響管の開口が振動面からλ/4となる場合、音響管を反射した音波は振動面で腹となり、音圧分布の変化が乏しく消音効果を得られないか、場合によっては逆効果となります。このように、音響管の消音効果は音響管の開口位置と音場の関係によって変動することがわかります。
なお消音理論については、神奈川大学工学部安田洋介教授に指導をいただき研究を進めています。
TBIレゾネータの実用化に向け、長門俵山道路大寧寺第3トンネル北工事(国土交通省中国地方整備局発注)において、実物大実験を実施し消音効果を検証しました。音響管の対象周波数は4Hzと8Hzの2種類とし、4Hz用は折返し形状で8Hz用は直管形状としました。音響管開口のトンネル断面に対する面積比は各5%(トンネル断面積:105.5m2、4Hz用音響管の開口面積:5.5m2、8Hz用音響管の開口面積:5.7m2)でした。
今回の開発では、4Hzと8Hzの2つの周波数のみを対象として、面積比5%での消音効果を確認しました。今後は対象とする周波数の拡大を図るとともに、面積比の増大による消音効果の増幅を目指します。さらに、気温による波長の変化や、発破時の卓越周波数の変化にも対応できるよう、音響管の延長調整機能についても開発を進める計画です。
発破による超低周波音が問題となり得る山岳トンネル工事に対して積極的に導入を提案し、適用実績を蓄積します。さらに、新技術情報提供システム(NETIS)への登録申請を実施し、藤崎商会からの外販を予定しています。
・飛島建設株式会社 経営企画室 広報室
松尾 和昌 TEL:044-829-6751
・飛島建設株式会社 技術研究所第二研究室
小林 真人、岩根 康之 TEL:04-7198-7553
・株式会社藤崎商会
片山 典信 TEL:082-292-6321