NEWS RELEASE
ニュースリリース

ニュースリリースのメインビジュアル

コンクリート吹付け時間の短縮と粉じん・はね返りの低減を同時に実現する型枠併用吹込み方式一次支保工構築工法「Smart Lining System™」を開発

 飛島建設株式会社(東京都港区:社長 乘京正弘)、株式会社エム・シー・エス(山梨県韮崎市:社長 河西哲夫)、および株式会社すばる建設(埼玉県三郷市:社長 稲村隆浩)は、山岳トンネル建設工事の施工サイクルタイムの短縮による生産性の向上、坑内環境の改善、ならびに、材料ロスの低減を目的に、型枠併用吹込み方式による一次支保工構築工法「Smart Lining System™」を開発しました。

Smart Lining System™対応 エレクタ一体型コンクリート吹付け機 SSmart Lining System™実施状況

図1 Smart Lining System™対応
       エレクタ一体型コンクリート吹付け機
図2 Smart Lining System™実施状況

 山岳トンネル建設工事において、工期短縮やコスト低減を目的に施工のサイクルタイムの短縮が望まれています。特に吹付けコンクリートの施工時間は全体サイクルの約2割を占めていることから、吹付けコンクリートの施工時間の短縮が注目され、コンクリート吐出量の大容量化が進められています。
 しかしながら、時間あたりのコンクリート吐出量の増加は、吹付けコンクリートの粉じんやはね返りが増加することから、材料ロスの増加や坑内環境の悪化といった課題がありました。ずい道等建設工事における「粉じん対策に関するガイドライン」の改正により、坑内粉じん濃度目標値が3mg/m3から2mg/m3に引き下げられたこともあり、坑内環境はさらなる低粉じん化が求められています。
 そこで、吹付けコンクリートの施工時間の短縮と粉じん・はね返りの低減を実現する型枠併用吹込み方式一次支保工構築工法「Smart Lining System™」を共同で開発しました。地山に直接コンクリートを吹付ける従来工法(図3参照)に対し、本工法は、コンクリート吹付け仕上がり面位置に専用型枠をセットし、地山と専用型枠との間にコンクリートを吹込むものです(図4参照)。従来の吹付けコンクリートに対して、地山と専用型枠で囲まれた空間内にコンクリートを吹込むため、コンクリートの吐出量を増加させても、はね返りと粉じんの発生を大幅に抑制することができます。
 従来の吹付けコンクリートは、はね返りにより20%程度の材料ロスが発生しています。本工法では、はね返りを抑制できることから材料ロスを削減できます。そのため、その削減分(最大20%程度)の施工時間の短縮が見込まれます。加えて、コンクリート吐出量の大容量化により、更なる施工時間の短縮が期待できます。

吹付けコンクリート(従来)施工イメージ
図3 吹付けコンクリート(従来)施工イメージ
Smart Lining System™ 施工イメージ
図4 Smart Lining System™ 施工イメージ

 ここで、一般的な吹付けコンクリートの施工では、吹付け直後からコンクリートを急速に硬化させるため、急結剤を添加します。本工法においても、早期の支保効果発現と吹付けコンクリート施工時間の短縮を目的に急結剤を添加しますが、急速な硬化に伴うコンクリートの充填不良と締固め不足による品質低下が懸念されます。そのため、本工法では充填性の高いコンクリート配合を採用するとともに、吹込み初期段階(0~数秒)においてコンクリートの可塑性を確保するために特殊混和剤をノズル近傍にて添加します。吹込みエアや専用型枠に設置された型枠振動機によりコンクリートは締固められ、密実に充填されたコンクリートが構築できます。なお、特殊混和剤の添加を中断することで、従来の吹付け工法もそのまま実施可能であり、汎用性のある工法となっています。

 中央新幹線伊那山地トンネル新設(戸中・壬生沢工区)工事において、本工法の品質を確認する実験と試験適用を実施しました。
 品質確認実験はトンネルを模擬した支保工を対象に実施しました(図5参照)。構築されたコンクリートの仕上がりは良好であり、所定の強度発現が得られることを確認しました。


トンネルを模擬した鋼製支保工への実験状況と仕上がり

図5 トンネルを模擬した鋼製支保工への実験状況と仕上がり

 実験の結果を受けて、トンネル坑口部の明り巻き区間の一部に、本工法を試験的に適用しました(図6参照)。所定位置への専用型枠のセットやコンクリートの吹込みなど一連の作業が実施でき、実際のトンネル工事においても本工法は適用できることを確認しました。


トンネル坑口部明り巻き部への適用状況と仕上がり

図6 トンネル坑口部明り巻き部への適用状況と仕上がり

 今後、本工法のトンネル建設工事への本格適用に向けて、更なる品質向上や施工性の改善に取り組んでいきます。

 飛島建設株式会社 企画本部 広報室 嶌田 陽一 TEL:03-6455-8312、FAX:03-6455-8460

 飛島建設株式会社  技術研究所   松田 浩朗 TEL:04-7198-7572、FAX:04-7198-7586
 株式会社エム・シー・エス      河西 哲夫 TEL:0551-21-2000、FAX:0551-21-2008
 株式会社すばる建設         稲村 隆浩 TEL:048-952-8338、FAX:048-953-3654