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FMS合金製U形ダンパー制震工法『I²RUD®制震工法』の評定取得

-地震による建築物の揺れを低減する小型で軽量な履歴型制震ダンパーの開発-

 飛島建設株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:乘京正弘)は、鉄筋コンクリート造建築物向けの小型で軽量な履歴型制震ダンパー『I²RUD®(アイラッド)』[Invariable Infinite Rolling U-shaped Damper](図1参照)を開発し、I²RUDを建築物に適用する「FMS合金製U形ダンパー制震工法『I²RUD®制震工法』について、一般財団法人 日本建築センターより、評定(BCJ評定-SS0060-01)を2023年12月13日に取得しました。
 I²RUD®(アイラッド)は、①二次壁内への配置が可能であり、平面プランの制約を受けることなく配置が可能、②小型・軽量であるため人の手で運搬、設置工事が可能、③構成部材がシンプルであるため低コスト、④繰返し性能に優れるため被災後の取替えは不要など、これまでの制震ダンパーにはない特長を多く有しています。

構成2
図1 I²RUDの構成

 2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、日々明らかにされてくる惨状から、改めて地震という自然災害の凄さと脅威を感じさせられています。私達はこの30年足らずの間に、阪神淡路大震災におけるビル、インフラの倒壊、東北地方太平洋沖地震での津波被害、平成28年熊本地震による木造建屋の被害等、巨大地震災害を目の当たりにしてきました。今後も南海トラフ地震、首都直下地震など巨大地震の発生が懸念されています。
 そして、これらのような巨大地震に対し、鉄筋コンクリート造(RC造)建築物においては、地震後の継続使用という観点から、躯体の損傷を抑えるため、地震時の建物の変形を低減する制震工法の重要性が高まっています。建築物の被害軽減に対する耐震性向上の備えは、人命の保護や財産の保全、そして人々の生活や都市機構維持のためにも重要と考えられます。
 当社はこれまで、上述の巨大地震や繰返し発生する地震に対して、揺れを低減するための制震ダンパーを多く開発してきました。そして今回、新たに小型で軽量な履歴型制震ダンパー(I²RUD)を、RC造建築物の水平スリット部に設置する「FMS合金製U形ダンパー制震工法『I²RUD制震工法』」を開発いたしました。
 本工法は、RC壁の水平スリット部に履歴型制震ダンパーを設置できることから、意匠上のプランに制約を受けず、さらに専有面積を減少させることなく制震効果が得られます。また、コストパフォーマンスに優れる制震工法であり、建設コストの1%以下の導入コストで、地震の最大応答変形(揺れ)を10%程度低減することができます。

 本工法は、履歴型制震ダンパーであるFMS合金製U形ダンパー(以下、I²RUD)をRC造建築物に適用する『I²RUD制震工法』です。I²RUDは、U形に曲げ加工したダンパー材を上下の拘束プレートで挟み、ボルト接合したシンプルな構成の履歴型制震ダンパーとなります(写真1参照)。I²RUDは、地震による建物の揺れがダンパーにせん断変位として伝達され、上下間の拘束プレート間に位置するダンパー材が転がるように変形することで、建物の応答変形(揺れ)を低減します(図2参照)。

全体図
写真1 I²RUD
挙動
図2 I²RUDの挙動

 また、図3のように、I²RUDをRC壁の水平スリット部に設置することで、前述のように建物の応答変形(揺れ)を低減します。水平スリットは、一般的な建物において計算上耐力を期待しないRC壁には必ず設けるものであり、通常使われない空間となります。そのため、その通常使われない空間を有効活用した設置方法となります。
 I²RUDの設置例としては、共同住宅におけるバルコニー側の方立RC壁(図4(a)参照)や三方スリット付きRC壁(図4(b)参照)などがあり、外壁、内壁問わず適用が可能です。また、RC壁の下端、中間(立上り部)にも設置することができます(図4(c)、(d)参照)。

適用
図3 I²RUDの適用
立法
(a) 方立RC壁
三方
(b) 三方スリット付きRC壁
設置例
図4 I²RUDの設置例

 I²RUDは表1に示す3種別であり、求めるダンパー荷重や配置する壁厚さによって選定することができます。
 I²RUDの構造性能は、小さい変形から大きな変形まで安定した履歴を確保できます(図5参照)。特に、靭性能が高いFMS合金を使用していることから大変形に追従することが可能です。最大変位は、±45mmまで性能を確認しています。今後、形状を変更することで、より大きい変形にも対応することができます。

種別2
表1 ダンパー材の種別
図5
図5 I²RUDの履歴ループ(T12W80-Type)

(1) RC壁の断面内配置のため、意匠上のプランに制約を与えず、専有面積も減少しない
(2) 長さ500mm、高さ76、96mm、幅88、108mmと非常にコンパクト
(3) 人の手で運搬が可能なほど軽量(約20㎏)であるため、設置工事が容易
(4) 靭性能が高い材料を使用しているため、大地震時の変形にも安定した性能を発揮
(5) 繰返し性能が高いため、余震や繰り返しの地震に有効

 I²RUDにおけるダンパー材の材料は、制震ダンパーを対象に開発された、靭性能および繰返し性能が高いFMS合金※を使用しています。また、繰返し性能をより向上させるための工夫として、写真2のようにダンパー材の中央部分に切り込み加工を施すことで、曲げ加工時の残留ひずみが小さくなり、繰返し性能がさらに向上したダンパー材となっています。
 ※FMS合金:建築構造用Fe-Mn-Si系鋼材(大臣認定番号MSTL-0584)

ダンパー材2
写真2 ダンパー材

本工法の適用範囲は、以下の通りです。
(1) 建築物の高さは、60m以下
(2) 構造形式は、純ラーメン構造または耐震壁付きラーメン構造
(3) 構造スパンは12m以下、階高は4m以下
(4) コンクリート設計基準強度Fcは、24N/mm²以上、45N/mm²以下
(5) 付加制震として設計

 今後は、巨大地震や繰返し発生する地震に対して、継続使用性の向上を求めるRC造建築物に対して、I²RUD®制震工法の提案を積極的に行っていきます。また、内閣官房が推進する国土強靭化計画に則り、巨大地震に対して継続使用が可能な建物の提供に少しでも貢献できるように、より多くのRC造建築物に本工法が適用されることを目指していきます。

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