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「木材を用いた大規模炭素貯蔵技術」を開発し施工実験により実現性を検証

-液状化対策により地中への大量の炭素貯蔵を実現-

 飛島建設株式会社(社長:築地 功)は、液状化対策により地中への大量の炭素貯蔵を実現する「木材を用いた大規模炭素貯蔵技術」を開発し、施工実験により施工の実現性を検証しました。なお、本研究開発の一部は2023年10月23日に締結した京都大学防災研究所との包括的連携協定による共同研究で、京都大学 渦岡良介教授より技術指導を頂いています。

 防災・減災と気候変動緩和への対応は建設業の社会的使命です。本開発は、当社における防災・減災と気候変動緩和を両立する取り組みの一つです。
 本技術の開発により、次の3つのことが可能になります。

① あらゆる形状・樹種の丸太の無駄のない活用
② 大地震時の液状化発生抑制
③ 地中への大量の炭素貯蔵

 今回、秋田県立大学アグリイノベーション教育研究センターにおいて施工実験を実施し、本技術の施工が実現可能であることを確認しました。
 今後、本技術の早期の社会実装を目指し、「2050年カーボンニュートラル」社会、さらにはその先の「カーボンネガティブ」社会の実現に貢献すべく、研究開発を進めていきます。

 伐採後に再造林が行われる持続的な森林経営に基づいた木材の長期・大量利用は、気候変動緩和策として極めて有効です。しかしながら、我が国では通直でない丸太の取引価格が十分に高くない等の影響で、再造林率が3~4割程度にとどまっています。このため、これらの木材の新たな需要を創出し、価値を高めることが再造林促進、ひいては有効な気候変動緩和策となります。
 一方で、南海トラフ地震などの巨大地震の発生が迫っており、この対策が急務となっています。特に、地震時に発生する液状化は、構造物に甚大な被害を与えるだけでなく、津波などからの避難に支障を与える恐れがあるため、液状化対策の重要性が増してきており、この対策に求められる性能も高くなってきています。

 これらの課題を解決するため、「木材を用いた大規模炭素貯蔵技術」を開発しました。
 液状化対策として使用する改良体(以下、「木質コラム」)は、薪状の木材を束ねて形成した長さ1~2mの柱状体です。この木質コラムを複数縦に重ね、中・大型の杭打機を使用して20mの深さまで打設することで緩い砂地盤を密実に改良し、地震時の液状化の発生を防ぎます。

 この技術の開発により、次の3つのことが可能になります。

① あらゆる形状・樹種の丸太の無駄のない活用
木質コラムには、丸太を割って薪状にした木材を使用します。このため、あらゆる直径の丸太が使用できます。また、長さ1~2mに短く切断した丸太を用いるため、曲がりの影響が少なく、曲がりのある丸太でも使用できます。このため、使用する丸太の樹種を問いません。さらに、加工時に発生する木くずが少なく、木材を無駄なく使うことができます。

② 大地震時の液状化発生抑制
木材を束ねた木質コラム内には、隙間が多くあるため、高い排水効果が期待できます。このため、密度増大効果以上の液状化抑制効果が期待でき、大地震時の液状化への対応が可能になります。

③ 地中への大量の炭素貯蔵
木質コラムに用いる木材の中には、光合成により大気中から回収した大量の炭素が固定されています。地中の地下水以深では、木材は腐らずこの炭素が半永久的に貯蔵され続けるため、液状化対策以外のコストをかけずにCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)が実現可能となります。
本技術により、液状化対策工事1ha当たりCO2換算で4200トン※1の炭素(一般家庭の年間CO2排出量※2の1650年分)を地中に貯蔵することができます。

※1:改良率5%、改良深度20mの場合
※2:2.52 t-CO2=環境省 令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査結果について(速報値)

 秋田県立大学アグリイノベーション教育研究センターにおいて、本技術の施工の実現性を検証する施工実験を実施しました。
 本実験により、薪状の木材を束ねて任意の寸法の木質コラムを構築できることや、中・大型の杭打機を用いた木質コラムの地中への打設が可能であることを確認しました.また、地中に打設した木質コラムを掘り出し、施工の過程で木質コラムに損傷が生じないことを確認しました。

 液状化対策と大規模炭素貯蔵による気候変動緩和策を両立する本技術の早期の社会実装を目指し、「2050年カーボンニュートラル」社会、さらにはその先の「カーボンネガティブ」社会の実現に貢献すべく、研究開発を進めていきます。

飛島建設株式会社 管理本部 広報部 
TEL: 03-6455-8312

飛島建設株式会社 技術研究所 村田 拓海
TEL:04-7198-1101