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鋼製支保工建込み時の作業員の切羽立入りをゼロ人にするための取組について

-「北海道新幹線、札樽トンネル(富丘)」にて試験施工を実施-

 飛島建設株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:築地 功)は、山岳トンネルの鋼製支保工建込み時の作業員の切羽への立入りをゼロ人にして肌落ち災害を根絶するため、鋼製支保工にクイックジョイントと頭付きアンカーを事前に設置することで、切羽での天端継手板の締結作業とつなぎ材設置作業を排除する試験施工を実施しました。
 「北海道新幹線、札樽トンネル(富丘)」工事にて実施した試験施工では、鋼製支保工建込み作業中に切羽の危険領域(切羽の天端から45度の範囲、図-1)に一人も立ち入ることなく、建込みが可能であることを確認しました。

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 標準的な鋼製支保工建込み作業では、鋼製支保工を把持したエレクタ一体型吹付け機が切羽へ据え付けられた後、天端継手板の締結作業、つなぎ材設置作業、金網取付作業、建込み位置の調整・固定作業時に作業員が切羽へ立ち入ります。
 切羽へ立ち入る前に一次吹付けや鏡吹付けを行い、天端からの崩落や切羽からの肌落ちがないかを切羽監視責任者が監視しながらの作業となりますが、脆弱な地山では吹付け直後のコンクリートが地山もろとも急に落下し、切羽監視責任者による退避指示が間に合わずに作業員へ衝突し、被災する懸念があります。
 また、昨今の建設作業員の高齢化により熟練の作業員や切羽監視責任者が減っていることなどから、鋼製支保工の建込みを安全かつ高精度に行い、かつ省人化することが課題となっています。

 今回試験施工を実施したのは、独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 北海道新幹線建設局の「北海道新幹線、札樽トンネル(富丘)」工事です(表-1)。

切羽工事概要

以下に今回適用した2つの新しい取組について解説します。

 標準的な鋼製支保工の天端継手部は、左右の継手板を切羽直下で作業員がボルト・ナットにより締結しますが、クイックジョイントは、メス側とオス側の治具を事前に継手板へ固定し、エレクタ操作のみで締結可能な構造となっています。
 実際の試験施工で使用したクイックジョイントは図-2、クイックジョイントよる天端継手板の締結状況は図-3の通りです。
 今回の試験施工では、クイックジョイントを初めて使用するオペレータでも、エレクタ操作のみで天端継手板をスムーズに締結できることが確認できました。

クイックジョイント
クイックジョイント2

 標準的な鋼製支保工の建込み方法では、建込み後から吹付けコンクリートによって固定されるまでの間、鋼製支保工相互を連結して転倒を防止するために、建込み後の切羽直下で作業員がつなぎ材を設置する必要があります。
 これを解消するため、つなぎ材の代わりに頭付きアンカーを建込み前の鋼製支保工へ事前に設置しておき、エレクタで鋼製支保工を把持したまま頭付きアンカーを吹付けコンクリートに埋め込み、固定を確認してからエレクタを取り外すことで、切羽直下でのつなぎ材設置作業を省略します。
 今回の試験施工では、切羽後方に設置したトータルステーションと、鋼製支保工の左右脚部と天端の計3箇所に設置したマグネット式の特殊プリズムにより座標を確認しながら、頭付きアンカーが設置された状態の鋼製支保工を目標位置へ誘導を行いました(図-4)。

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事前に設置した頭付きアンカーの固定位置は図-5の通りで、計10本設置しました。

頭付きアンカー

目標位置へ建込み後、プリズムを取り外し、脚部の頭付きアンカーを埋め込むようにコンクリートを吹き付け、脚部の固定を確認後にエレクタを取り外しましたが、動くことなく固定できていたことを確認しました(図-6)。

アンカー左右

 鋼製支保工の建込みと二次吹付け終了後、切羽の安全を確認したうえで鋼製支保工の位置を計測して目標位置との誤差を確認した結果は表-2の通りです。従来の方法による建込み精度は一般的に±50mm程度と言われており、今回の施工では最大誤差が36mmであったため、従来の方法と同等以上の精度で建て込めたことを確認できました。
 また、建込み作業中は切羽の天端から45度の範囲へ誰一人立ち入ることなく作業でき、安全性の向上効果が確認できました。

 飛島建設株式会社では、今回の試験施工結果を踏まえ、鋼製支保工を安全かつ高精度に建て込み、従来よりも省人化するための施策を検討し、社内に水平展開していきます。そして、将来的には建込み作業の完全自動化を実現して、省人化に貢献したいと考えています。

飛島建設株式会社 管理本部 広報部 TEL : 03-6455-8312

飛島建設株式会社 土木本部 土木技術部 TEL: 03-6455-8327