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音場可視化システム「OTOMIRU™ Ver.2」を開発

― 3次元の音場情報をMR・ARデバイスにより可視化 ―

 飛島建設株式会社(東京都港区:代表取締役社長 乘京正弘、以下 飛島建設)は、早稲田大学基幹理工学部表現工学科・株式会社INSPIREIの及川靖広教授と共同で、3次元の音場情報をリアルタイムで実空間上に投影する音場可視化システム「OTOMIRU Ver.2」を開発しました。
 OTOMIRU Ver.2は2021年7月に発表した音場可視化システムOTOMIRU(以下 従来システム)*1 を高度化したシステムであり、複数断面内もしくは物体表面上の音圧レベル分布をMR・ARデバイスを用いて可視化することで、空間全体の騒音源や遮音欠損部を一度に探査することが可能となりました(写真-1)。

 *1 リアルタイム音響可視化システム「OTOMIRU」を開発

  https://www.tobishima.co.jp/press_release/detail/20210708095255.html


写真-1 OTOMIRU Ver.2での音の可視化

 従来システムでは、一度に算出できる音圧レベル分布が1つの断面に限られており、計測対象が広範囲にわたる場合は計測する位置や方向をその都度変更しなければならないといった課題がありました。そこでOTOMIRU Ver.2では、より効率的な計測の実現を目指し、音圧レベル分布の計測範囲を空間全体に拡張することを試みました。

 16個のマイクロホン(マイクロホンアレイ)で収録した音から空間全体の音圧レベル分布を算出し、MRデバイス(Microsoft社 HoloLens *2 2)やARデバイス(Apple社 iPad Pro *3)を介して実空間上に音圧レベル分布のカラーマップを投影します(図-1)。MR・ARデバイスは複数台接続することができ、複数人で同時に計測結果を共有することができます。

 *2 HoloLensはMicrosoft Corporationの登録商標です。

 *3 iPad ProはApple Incの登録商標です。


図-1 システム構成

 音の可視化手法であるビームフォーミング法 *4により、音圧レベル分布を算出します。OTOMIRU Ver.2では、従来システムに比べ解析範囲が広域となり計算量が増大していますが、解析アルゴリズムの改良によりリアルタイムでの結果の出力が可能となっています。

 *4 ビームフォーミング法:

 マイクロホンアレイ(複数の無指向性マイクロホンを配列したもの)を用い、任意の範囲における音圧レベル分布を算出する手法。ある方向からの音が各マイクロホンに到達するときの経路差を用い、それぞれで収録した信号に遅延などの処理を行うことにより、特定の方向における音圧レベルを求めることができる。これにより、任意範囲内の各計算メッシュの音圧レベルを算出する。

 空間内に複数点在する騒音源の探査や騒音の詳細な発生状況の可視化を想定し、複数断面の音圧レベル分布を可視化する手法を実装しました(写真-2)。最大3面の音圧レベル分布を同時に可視化することができ、各断面の位置や範囲、角度は任意に設定することができます。


写真-2 建設作業音の可視化(複数断面の音圧レベル分布)

 界壁や建具の遮音欠損部の探査や反射音の発生状況の可視化を想定し、物体表面上の音圧レベル分布を可視化する手法を実装しました(写真-3)。LiDAR(Light Detection and Ranging)センサを用いて事前に取得した対象空間の壁、床、天井、什器や家具などの点群データの座標をビームフォーミング法の解析点とすることにより、空間形状に沿った音圧レベル分布を可視化することができます。


写真-3 建具の遮音性能に関する音の可視化(物体表面上の音圧レベル分布)

 OTOMIRU Ver.2は以下のように適用することが可能です。
・ 複数の重機が稼働する建設工事現場での騒音源探査
・ 建設作業での騒音発生状況の可視化
・ 界壁や建具における遮音欠損部の探査
・ 建物内部の音響状態の調査
・ 騒音発生施設の漏音部位の探査
・ 騒音対策効果の検証

 OTOMIRU Ver.2では、マイクロホンアレイの位置や角度を変更することなく様々な箇所の音場情報を広範囲に可視化できるため、計測の効率化に寄与することができます。
 また建設工事現場をはじめ作業範囲が限られる場合でも、計測機材の設置位置によらず目的の音場を計測することができ、より柔軟な音場計測が可能となります。
 さらに、音の発生状況を視覚的に確認することによって専門知識をもたない人でも適切な騒音の評価が可能となり、より迅速な対策立案や効果検証、合意形成に繋がります。

 今後はOTOMIRU Ver.2を建設工事現場や建物内部での騒音調査・騒音対策効果の検証に適用し、環境負荷の少ない施工や音環境品質の向上に貢献していきます。また、建設分野だけでなく、オーケストラのコンサート等での音楽演出やデジタルアート作品での活用といったエンタメ分野での適用可能性もあり、株式会社INSPIREI(東京都新宿区:代表取締役 井上敦登)と協業したサービス展開も進めていきます。

飛島建設株式会社 企画本部 広報室 
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飛島建設株式会社 技術研究所
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