CIVIL ENGINEERING
TUNNEL

地下空間・山岳トンネルの技術

飛島の技術-土木のメインビジュアル

切羽安全監視システム

レーザー距離計を用いた多点同時変位計測による切羽押出し量の計測監視システム
 山岳トンネルの施工では、未固結地山や断層破砕帯等の脆弱地山に遭遇し、作業中に切羽崩壊が発生することがあります(写真-1)。「切羽安全監視システム」は、建設現場での簡易測量に使用される安価なレーザー距離計を用いて、複数台のレーザー距離計を遠隔制御する技術を応用し、切羽押出し量等の地盤変位を最小1秒間隔で多点同時に連続計測します。そして、得られた複数箇所の計測データを1台の計測用PCにワイヤレスで転送・演算処理して変位量や変位速度を算出し、あらかじめ設定した管理基準値(注意、危険、限界の3レベル)を超えた場合、アラーム付き警告灯により切羽作業員に対して即時に注意喚起します(図-1)。

写真-1:切羽崩壊の例

■ 写真-1 切羽崩壊の例

図-1:切羽安全監視システムの概要

■ 図-1 切羽安全監視システムの概要

トンネル施工情報管理システムの特長

 レーザー距離計を用いた「切羽安全監視システム」には、表-1に示す特徴があります。切羽の不安定な不良地山や崩壊性の地盤において、押出し量や地盤挙動の計測監視に本システムを適用することにより、以下の効果が期待できます。

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    切羽崩壊の予兆を検知して、切羽作業、退避等の安全行動を的確に実施できます。

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    切羽全体の変位量を面的に把握して、切羽補強工(鏡吹付け、鏡ボルト)の効果を定量的に評価することで、補強規模の増減や実施区間を合理的に設計・施工できます。

  3. 3

    ハンディなレーザー距離計をワイヤレス環境で使うため、現場運用が簡単で導入工程が従来の自動追尾型TSに比べて25~30%に短縮できます。

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    導入コストは従来の30%程度と安価です(計測期間6ヶ月の場合)。

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    機器増設や測定環境の設定には専門知識が不要であるため、同一現場内や他現場への移設が簡単にできます。

表-1 レーザー距離計を用いた「切羽安全監視システム」の特徴

 自動追尾型TSレーザー距離計
変位計測のアウトプット3次元変位変位量のみ
計測精度±1~3mm程度±1mm以内
測定時間5~10秒/測定最少1秒/測点
多点計測への適用性測点が増えるとリアルタイムの同時計測が困難1台の計測用PCで最大8測点までの同時計測可能

主な適用範囲

 危険な箇所に立ち入ることなく、非接触で対象物の変位量を多点同時に連続計測できることから、切羽安全監視だけでなく、以下の分野へ展開することができます。

  1. 土留め、切土、盛土などの地盤挙動のリアルタイム計測監視
  2. 近接施工を伴う構造物(擁壁、橋脚、橋梁、建築物)のリアルタイム影響計測
  3. 自然斜面や崩壊後の地すべりの動態観測