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振動の技術

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防振堤 ―伝播経路に置くだけで振動を低減―

技術概要

 建設振動対策では、発生する振動が小さい機械や工法を採用したり、防振マットなどを敷設して地盤への入力を低減したりする発生源対策が主として用いられます。これらの発生源対策の効果が十分でない場合、伝播経路対策の適用が検討されます。伝播経路対策には空溝や防振壁などがありますが、いずれも大規模で、費用対効果、安全面や施工性に課題があり、採用に至らない場合が多くあります。

 このような課題を解決するため、飛島建設は埼玉大学大学院理工学研究科の松本泰尚教授との共同研究により防振堤を開発しました。防振堤は接地面を拘束することで表面波の反射と散乱を生じさせて振動を低減します。伝播経路に置くだけで振動を低減できるので、安全、安価で効果的な伝播経路対策として建設工事に広く適用が可能です。

図 防振堤を用いた振動対策の概念図 イメージ

図 防振堤を用いた振動対策の概念図

写真 防振堤設置状況

写真 防振堤設置状況

技術の特徴

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    地表面の拘束により振動を低減

    • 防振堤は質量と剛性により接地面を拘束します。防振堤に入射した表面波は接地面を通過する際に反射と散乱が生じ、背面に透過する波の振幅が小さくなります。
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    高い振動低減効果

    • 0.45m3級バックホウの走行振動を対象とした実大実験では、質量体の面密度を約2,000 kg/m2、伝播方向の設置長さを約2mとして、16 Hz以上の振動数帯域で約5 dBの低減効果を確認しました。質量体の面密度を大きくすることで低減量は大きくなり、伝播方向の設置長さを長くすることでより低い振動数から低減効果を発揮することが可能になります。
    写真 実験状況 イメージ

    写真 実験状況

    図 防振堤による低減効果の実測例

    図 防振堤による低減効果の実測例

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    安全性と施工性に優れる

    • 防振堤は振動の伝播経路に置くだけで低減効果を発揮するため、施工が非常に容易です。
      また設置後の維持管理の手間もなく、安全面でも問題がありません。

従来工法との比較・長所

 同じ伝播経路対策として有名な空溝は、伝播経路上に設けた溝により振動を遮断することで振動を低減します。このため、溝の崩落や墜落災害の危険があり、地下水や雨水の対策も必要となりますが、防振堤は安全面でも問題がなく、維持管理にも手間がかかりません。
また、空溝の効果は深さに依存しますが、前述の課題から一般的な深さは2m程度といわれています。一方で、防振堤は地表面に設置するので面積の確保が比較的容易であり、低減効果においても優位といえます。

主な適用範囲

  • 建設工事全般
  • 振動が発生する工場や事業所にも適用可能

外部団体からの表彰・外部団体への登録状況

  • 特許第6785535号 地盤振動低減装置
  •  

施工手順など

  1. 防振堤ががたつかないよう設置個所の不陸整正を行います。
  2. 設置個所の不陸整正
  3. 整地した箇所に防振堤を配列します。クレーン仕様バックホウで移動・設置が可能です。
  4. 防振堤を配列
  5. 必要な数を並べて設置完了となります。敷地境界に配置し、仮囲いの支えとしても利用できます。
  6. 設置完了
Keyword
 
関連資料
飛島建設ニュースリリース:建設振動対策技術防振堤の開発と実用化 |飛島建設 (tobishima.co.jp)
関連技術
 
関連論文
  1. 日経コンストラクション,2020年6月22日号 鉄板に土のうを積むだけで振動10dB減
  2. 騒音制御, Vol45, No. 5, 防振マットと防振堤による建設振動対策技術の開発
  3. 岩根康之、小林真人、千葉泰河、松本泰尚:質量体と振動系の振動低減効果に関する研究
     ―数値解析による検討―、土木学会第73回年次学術講演会講演概要集、2018. 8
  4. 小林真人、岩根康之、千葉泰河、松本泰尚:質量体と振動系の振動低減効果に関する研究
     ―模型実験による検討―、土木学会第73回年次学術講演会講演概要集、2018. 8
  5. 千葉泰河、岩根康之、小林真人、松本泰尚:おもりを用いた環境振動の伝播経路対策に関する模型実験
     ―おもりの質量と低減効果の関係―、土木学会第74回年次学術講演会講演概要集、2019. 8
  6. 岩根康之、小林真人、千葉泰河、松本泰尚:おもりを用いた環境振動の伝播経路対策に関する模型実験
     ―おもりの幅および設置位置と低減効果の関係―、土木学会第74回年次学術講演会講演概要集、2019. 8
  7. 岩根康之、小林真人、千葉泰河、松本泰尚:質量体を用いた環境振動の伝播経路対策
     ―実大実験による振動低減効果の検討―、土木学会第75回年次学術講演会講演概要集、2020. 8
  8. 千葉泰河、岩根康之、小林真人、松本泰尚:質量体を用いた環境振動の伝播経路対策
     ―数値解析による振動低減メカニズムの検討―、土木学会第75回年次学術講演会講演概要集、2020. 8
  9. 岩根康之、小林真人、佐藤考浩、松本泰尚:振動制御装置を用いた環境振動の伝播経路対策
     ―模型実験による振動制御装置の配置に関する検討―、土木学会第76回年次学術講演会講演概要集、2021. 8