最低温度-15℃まで施工可能な無機系注入式アンカー材
「セメフォースアンカー寒冷地仕様」
技術概要
近年、あと施工アンカー用のアンカー材として、長期耐久性や耐火性の問題等から、無機系アンカー材の適用が広まっています。しかしながら、無機系アンカー材はセメントを主成分としていることから、冬期の施工において無機系アンカー材を用いた場合は凍害の懸念がありました。これにより工期の長期化や採暖養生等の対策が必要でした。
「セメフォースアンカー寒冷地仕様」であと施工アンカーを施工することで、最低気温-15℃まで初期凍害を受けずに施工が可能となり、採暖養生における工程の短縮やCO2削減に寄与することができます。
南極での施工
飛島建設は、毎年南極に技術者を派遣しています。この社会貢献の一環として、弊社は「セメフォースアンカー寒冷地仕様」を国立極地研究所に寄贈し、南極地域観測事業へ協力いたしました。この「セメフォースアンカー寒冷地仕様」を用いて、南極地域観測隊が昭和基地の風力発電設備の基礎のアンカーボルトを施工しました。

寄贈した「セメフォースアンカー寒冷地仕様」

南極での施工状況
※写真提供:国立極地研究所
特徴
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- 本製品は、セメント系の主剤に耐寒促進剤(亜硝酸系)を配合した混練水(防凍専用水)を組み合わせて使用します。凝固点が-15℃のため、冬期の施工でも初期凍害を抑制し、あと施工アンカーとしての付着強度を確保できます。
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- 冬期の施工における硬化までの採暖養生が不要となります。そのため、採暖養生により生じるCO2の削減に期待できます。
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- 環境性能が高くVOC(揮発性有機化合物)の発生がありません。また、横向き・上向き施工が容易で、粘度が高いため、たれ落ちしにくい材料です。

主剤と混練水(防凍専用水)

セメフォースアンカー寒冷地仕様
主な適用範囲
- 施工環境温度 : 最低気温-15℃以上、日平均気温-10℃以上
- 施工時最大環境温度 : 15℃
- 次工程までの期間 : 日平均気温-5℃以上で3日間、-5℃未満-10℃以上で7日間
実証実験
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養生温度-10℃でのあと施工アンカー付着強度試験結果
- -10℃の環境下においても、十分な付着強度が発現します。
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- 最低気温-15℃を記録した寒冷地での付着強度試験でも、十分な付着強度が発揮することを確認しました。

寒冷地の冬期における試験体作成状況①

寒冷地の冬期における試験体作成状況②

あと施工アンカー試験体

寒冷地での付着強度試験状況
- Keyword
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- 関連資料
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- 関連技術
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- 関連論文
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- 折田現太,阿部隆英,高瀬裕也,兼吉孝征:あと施工アンカーに用いる耐寒剤を配合した無機系接着剤の付着強度と積算温度による強度増進に関する研究,コンクリート工学会年次論文集,Vol.42,No.2,pp.1147-1152,2020
- 阿部隆英,折田現太,安藤重裕,兼吉孝征,高瀬裕也:あと施工アンカーに用いる耐寒促進剤を調合した無機系接着剤「セメフォースアンカー寒冷地仕様」の積算温度を用いた付着強度の推定,とびしま技報 第69号(2021),pp.59-64,2021
https://www.tobishima.co.jp/laboratory/technique/gihou_69.html
- 高瀬裕也,阿部隆英,折田現太,安藤重裕:氷点下でも施工可能な無機系アンカーの定着性能,日本コンクリート工学会「コンクリート工学」,Vol.60,No.6,2022.6
- 松永健也,高瀬裕也,阿部隆英,折田現太,安藤重裕:氷点下で定着した無機系あと施工アンカーの特性と力学挙動,日本建築学会構造系論文集,Vol.87,No.796,2022.6
※セメフォースアンカー寒冷地仕様は、飛島建設株式会社と住友大阪セメント株式会社の共同開発製品です。