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制震・免震・耐震

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FMS合金製U形制震ダンパー『I²RUD®-アイラッド-』制震工法

地震による建築物の揺れを低減する小型で軽量な履歴型制震ダンパー

技術概要

 本工法は、建築物の耐震性の向上を目的として、「FMS 合金製U形ダンパー<I2RUD , Invariable Infinite Rolling U-Shaped Damper-アイラッド->」を建築物の構造体に適用する制震工法です。現行設計法で定められた建築物の鉄筋コンクリート造(RC造)架構部分に、本工法を適用することで、地震時の応答を低減することが可能であり、柱梁部材の損傷を抑制することができます。RC造建築物の設計では、RC壁に構造スリットを設けて非構造壁とする設計方法が多くみられますが、この構造スリット部にI²RUDを配置することで非構造壁が制震RC壁となります。I²RUDは壁断面内に納まり、仕上げ材で隠れるため、外観を損ないません。

構成 イメージ

I²RUDの構成

挙動 イメージ

I²RUDの挙動

制震工法の挙動 イメージ

I²RUD制震工法の挙動

制震工法の断面 イメージ

I²RUD制震工法の断面イメージ

技術の特徴

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    安定したダンパー性能

    • I²RUDは、上下の拘束プレート間にせん断変位が生じ、ダンパー材が転がるように塑性変形することで、地震エネルギーを吸収する履歴型制震ダンパーです。ダンパー最大荷重は、58kN、78kN、90kNの3タイプです。また、ダンパー材部分に靭性能および繰返し性能に優れるFMS合金材※1を使用していることで、小さい変形から最大±45mmの大変形まで安定した履歴性能を発揮します。

    ※1 FMS合金材:建築構造用Fe-Mn-Si系鋼材(大臣認定番号MSTL-0584)

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    平面プランの制約を受けることなく、床面積の減少もなし

    • I²RUDは、壁の断面内に納まるため、意匠設計における平面プランに制約を与えません。また、共同住宅等の場合、居室部の床面積にあたる壁芯面積が減少しないため、不動産価値が損なわれることがなく、仕上げに隠れるため外観を保つことが可能です。
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    小型・軽量であるため人の手で運搬、設置工事が可能

    • 長さ500mm×幅(奥行)約100mm、高さ約100mmと小型形状で取り回しが良く、総重量約20kgと軽量であるため人の手で運搬および取付けが可能です。クレーン等の重機を必要としないことから、比較的安価に設置工事ができます。
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    構成部材がシンプルであるため低コスト

    • ダンパー材、拘束プレート、高力ボルトから構成され、構成部品数が少なくシンプルな構造となっており、製造や製品管理に掛かる費用が抑えられます。
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    繰返し性能に優れるため被災後の取替え不要

    • ダンパー材の中央に切込み加工を施すことで、曲げ加工の残留ひずみが小さくなり、繰返し性能が優れています。最大ダンパー変位±45mmを10回以上繰り返しても性能低下しないことを実験で確認し、震度7クラスの地震を複数回経験しても地震後の取替えやメンテナンスが不要な制震ダンパーです。

従来工法との比較、長所

 I2RUDを適用した建物は、適用しない建物と比較して、地震時の最大応答層間変形を10%~30%程度低減することができます。必要な階に必要なダンパー量の減衰力を付加するため、効率よく制震効果を建物に与えることができます。その際の導入コストは、建設工事費の概ね0.5%~1.0%程度で試算しています。

主な適用範囲

  • 建築物の高さは、60m以下
  • 構造種別は、RC造またSRC造
  • 構造形式は、純ラーメン構造または耐震壁付きラーメン構造
  • 構造スパンは12m以下、階高は4m以下
  • コンクリート設計基準強度Fcは、24N/mm2以上、45N/mm2以下
  • 付加制震として設計

評定取得

  • 評定機関:一般財団法人 日本建築センター
  • 評定番号:BCJ評定-SS0060-01
  • 評定取得日:2023年12月13日
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関連資料
関連技術
 
関連論文
  • FMS合金製U形ダンパーの構造性能に関する実験的研究(その1),日本建築学会大会学術講演梗概集,構造V,pp319-320,2023.7
  • FMS合金製U形ダンパーの構造性能に関する実験的研究(その2),日本建築学会大会学術講演梗概集,構造V,pp321-322,2023.7